「マンション共用施設の転用」で見える管理組合運営の難しさ

1月18日付けのYOMIURI ONLINEに、「マンションの共用施設再生」という記事が掲載されていました。

記事の内容を要約すると、

◆マンション管理組合で、維持管理費の負担軽減や、住民同士の交流促進のために共用施設を用途変更の改修をするケースが目立っている。

◆仙台のタワーマンションでは、利用率が低いにもかかわらず年間2百万円の維持費がかかる「温水プール」を撤去して、「多目的スタジオ」に改修した。

◆その改修工事に3千万円かかったが、プールの維持費や修繕費の削減効果を考えると、10年で資金回収できる計算になるとのこと。また、利用率もプールに比べて7倍に増えた。

◆都内の大規模マンションでは、利用者の減った「バー」を「イタリアンレストラン」に改修した。ただし、レストランの運営は外部に委託し、高級感を落とさないよう留意した。

◆別の都内のマンションでは、稼働率が低下した機械式駐車場の一部を、平置き駐車場に改修した。機械式より利用料が高いにもかかわらず、改修後の応募倍率は4倍にのぼり、結果的に利用収益の増加につながった。

◆遊休化した共用施設をそのままにすると、マンションの資産価値や魅力を損ないかねない。ただ、共用施設の改修を行う際には、管理規約上の「共用部分の大きな変更」に該当する可能性が高く、その際には総会決議で4分の3以上の同意が必要になる。

◆そのため、施設の用途変更を進めるなら、現状の利用状況や維持管理費などもしっかり把握して住民が客観的に判断できるデータを提示し、事前に住民説明会などで丁寧に話し合ってコンセンサスを高めておくことが大切。

 

この記事で紹介された管理組合では、おそらくその執行機関である理事会の役員さんたちが、自分たち自身が解決すべき問題と捉え、しっかりと厳しい現実を直視しながら主体的に改革のための行動を起こしたことが功を奏したものと思います。

しかし、実際には明らかに問題を抱えていながら、このような見直しがなされることはかなり少数派であるように思います。

その最大の理由は、

管理組合の運営を「我が事」と考えずに「無関心」のままやり過ごそうとする人が圧倒的に多数派を占めているからだと思います。

その意識を象徴する典型的な例が、「1年毎の役員輪番ルール」です。

このシステムで運用すると原則として毎年役員が総入替えになり、理事会の継続性を維持することは至難の技です。知恵やノウハウの蓄積も期待できないでしょう。

輪番制を採用する最大の目的は、区分所有者間の負担の衡平性の維持」にあります。

しかし、管理組合の運営の目的は「資産価値の維持向上と快適な居住環境の確保」です。

組織の目的とそれを支える人事制度がマッチしていなければ、その組織の運営はうまくいかないのが世の道理です。

役員を忌避する理由が、知識や情報に乏しいため役員としての責任を果たすことが難しいということなら、マンション管理士などの外部専門家を活用するという手段もあります。

今回の記事のように、経済環境や社会構造の変化の中で、管理組合の運営も「現状維持」が許されず、難しい課題の解決を迫られる局面がますます増えていくことが予想されます。

企業経営と同じ視点で組織の運営体制を見直す時期が近づいているのではないでしょうか。


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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