シェアハウスと「脱法ハウス」の境界線

 

生活の「共同」と住人同士の「交流」を、メインコンセプトに据えて、シェアハウスの市場はこの10年の間に成長してきました。

商品レパートリーも、建物のハードウエア的には、広めの戸建て住宅からファミリータイプのマンションを改装したものまで、ソフト的には、入居時の費用負担の小さいことをウリにしたものから、起業など特定の目的を持つ者同士の交流を促すものまで広範囲に及んでいます。

こうした市場拡大の中、「怪しい」タイプの物件も登場してきました。例えば、東京・江戸川区の事例では、3LDKのマンションの一室に、10人以上も入居するようなものです。一人あたりの面積が異常に狭いうえに、個室を上下二段に分けた、「ウナギの寝床」のような環境です。

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分譲マンションにおいては、専有部分のリフォーム工事を実施する場合には、規約上管理組合の理事長等が承認するルールとなっているのが通常です。ただ、このような申請があった場合に、たとえ差し止めたいと思っても、管理規約であらかじめ制約していない限り、これを斥けるのは難しいという問題があります。

しかしながら、偽りの改装を申請をしたり、話し合いや協議に一切応じようとしないといった、一部の悪質業者の傍若無人な行動が、管理組合の神経を逆なでしたことで紛争も増え始め、マスメディアから取り上げられるようになりました。その結果、国交省も看過できなくなり、ついに規制する動きとなったようです。

去る9月6日、国交省は特定行政庁に対し、「シェアハウスは、建築基準法上の寄宿舎である」との公式見解を出すとともに、違反事例に対しては是正指導を行うよう通知したのです。

これによって、「居室間の間仕切り壁を準防火構造に仕様変更する」ことが建築基準法上必要になりました。また、東京都の建築安全条例では、「寄宿舎の居室面積は、7㎡以上」と定められており、都内の物件ではこれもクリアしなければなりません。

脱法ハウス業者は、表向きは「事務所」「倉庫」と称しながら、これまで規制を免れてきたのですが、今後は許されなくなるでしょう。

ただ、これで「脱法ハウス」が封じ込まれてメデタシかと言えば、そうでもありません。すでにある、戸建て住宅を転用した物件のほとんどは、このような対応はできていないと言われています。もし上記の規制をクリアしろということになれば、オーナーには当初想定以上の投資が必要になるうえ、工事を行おうとすれば、既存の入居者をいったん解約しなければならなくなります。

すべてのタイプのシェアハウスがクリアする必要があるのかを含めて、せっかく育ちつつある新しい賃貸市場の成長の芽を摘むことのないよう、行政も慎重に対応する必要がありそうです。

 


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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