マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
30~40代の男性にとって、「管理人さん」とは『めぞん一刻』のヒロイン音無響子(おとなし・きょうこ)のことに他ならない。試しに「管理人さん」でググってみると、トップには『めぞん一刻』関連のサイトだの、可憐な黒髪女性の画像だのが立ち並ぶ。
ラブコメマンガの金字塔『めぞん一刻』は、一刻館という古びたアパートに管理人としてやってきた音無響子と、一刻館の住人である五代裕作との恋愛模様を軸にした物語だ。そこに、愉快な住人たちの騒動がコメディタッチで味付けされている。
劇中で響子は、五代を含む住人たちに「管理人さん」と呼ばれる。しかし
【管理】ある規準などから外れないよう、全体を統制すること(小学館「大辞泉」より)
……何やらおカタい。灰色を帯びている。反クリエイティブ、非人間的、規律による不自由の象徴――。ネガティブイメージはいくらでも口をついて出てくる。
実際、物語開始当初の響子は物憂げで、住人にあまり心を開いていない。彼女は、結婚後たった半年で夫を亡くした未亡人なのだ。しかも一刻館の大家は死別した夫の父親であり、彼女は着任時に、夫と一緒に飼っていた犬(夫と同じ名前)を連れてくる。響子は「亡き夫の想い出に生きる女」として登場するのだ。“管理”の辞書的なイメージと同じく、灰色を帯びた存在として。
だが、管理人としての仕事を日々こなし、騒がしい住人たちに翻弄され、五代からの健気であたたかい愛情を受けることで、響子は変わっていく。亡き夫の呪縛を断ち切り、新しい人間関係を構築し、自分の人生を力強く歩みはじめる。しかも物語が進むつれ、気高く情に厚い彼女元来の美点は、よりいっそう輝きを増してゆく。
「管理」は英語でManagement、要は「経営」と同列の言葉だ。「経営」とは、組織を“管理・維持”ではなく“成長”に導く行為である。日本語の灰色的な語義からはずいぶん異なる、かなり前向きな意味を持っているのだ。自分にまとわりついた過去を維持するのではなく、自分を成長させた響子にも、ピッタリ当てはまる解釈ではないだろうか。
また、マネジメントと聞いて真っ先に浮かぶのは、名著『マネジメント』を記した(あるいはベストセラー『もしドラ』でおなじみの)ピーター・ドラッカーだが、彼はマネジメントという行為を7つの条件で定義した。その第一条件がこれだ。
「マネジメントとは、人の強みを発揮させ、弱みを無意味にすることである。つまりそれは、人にかかわることである」
なんだか「管理人さん」という呼び名のイメージが、今までとはまるで変わってしまいそうだ。
[Photo by Dennis Amith]
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