マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
Business Jounalで、「マンション、電力契約めぐる居住者への“解約強制”で紛争多発…高圧一括受電の闇」という記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ 3月5日、最高裁は、「管理組合総会で高圧一括受電導入を決議しても、居住者の電力の個別契約解約申し入れを義務付ける部分は効力を有しない」との判決を下した。
■ 居住者が総会決議に反して個別契約の解約に応じなくても、不法行為にならないことになる。
■ 訴訟の舞台となった札幌市のマンション(544戸)では、高圧一括受電に変更して電気代を下げるために、総会で高圧一括受電導入の特別決議(4分の3以上の賛成多数)をした。
■ その決議には、各戸に北海道電力との個別契約を解除し、高圧一括受電サービスを受ける新たな契約を結ぶことが織り込まれた管理規約の改正も含まれていた。
■ この決議に2名の区分所有者が反対して解約に応じなかったため、高圧一括受電の導入が実現できなくなった。そのため、管理組合の元理事が反対者の2名に対して損害賠償を請求していた。
■ 最高裁判決は、総会決議をしても、その決議はマンションの専有部分には効力が及ばないため、決議に応じなくても不法行為とならないという判断を下した。
■ 高圧一括受電の既存マンションへの導入は、居住者全戸が導入に同意しなければならないことが導入のネックになっていた。そのため、導入に反対する居住者に対して、訴訟の可能性も示して圧力をかけ紛争に発展する事例も多数みられた。今回の最高裁判決は、こうした問題に終止符を打ったことになる。
■ 一方、今回の判決は高圧一括受電業界にとっては大打撃となるだろう。高圧一括受電業界では、大手のオリックス電力や長谷工の子会社、長谷工アネシスなどが事業から撤退するなど、大きな岐路に立っているが、今回の判決が影響を及ぼす可能性もある。
■ 電力自由化のなかで、地域電力会社から他社に変えるなど多彩な選択肢を探っている。高圧一括受電を導入した場合は、居住者は専有部分について電力会社を変更することができず、電力自由化の恩恵を受けることができない。
■ 今回の最高裁判決の趣旨が、全国のマンション管理組合と管理会社へ徹底されるためにも、国土交通省の指導的な役割が求められる。
従来から、マンション内で高圧一括受電を導入する場合には、組合総会決議に加えて専有住戸に関する既存の受電契約について全戸分の解約同意書を提出することが (電気事業法にもとづいて)地域電力会社から求められていました。
そのため、一括受電の導入は「全組合員の同意取付け」が事実上の要件とされており、新築はともかく、既築のマンションではかなりハードルが高いのです。
その意味で、今回の最高裁判決の内容自体には画期的な印象はありませんが、導入時のハードルの高さをさらに揺るぎないものにしたとは言えるでしょう。
そもそも高圧一括受電の本質とは、「マンションの変圧器を誰が保有するのか」という問題にすぎません。
マンション内の共用部分ならびに各専有住戸の電気は、電力会社の送電線(高圧)から共用部の電気室にある変圧器を介して低圧に変換されることで供給されています。
地域電力会社が、マンション内にある「電気室」を無償で借りつつ、そこに変圧器を設置しているのが一般的(※注記参照)です。
<※注:大規模マンションの場合には、共用部は高圧受電しているため、変圧器を自ら保有・管理しているケースが多く見られます。>
そのため、変圧器の所有および管理権限は、地域電力会社にあります。
言い換えると、高圧一括受電は、この変圧器の所有・管理の権限を一括受電業者(新電力)、もしくは管理組合に変更することです。
一括受電業者と契約する場合には、管理組合側に初期導入コストはかかりません。
これまで地域電力会社が無償で提供してきた変圧器、ならびに各住戸内の検針メーターやアンペアブレーカーを業者側が新たに提供してくれます。
一括受電が流行した当時の相場では、共用部の電力料金が従前に比べて約4割下がることが多かったと思います。
<ただし、料金削減のメリットをすべて共用部に集約して還元しており、専有部分の電力料金は従前と同じとすることが多い。>
一方、区分所有者にとって一括受電のデメリットあるいはリスクとは何でしょうか?
主に以下の4点が考えられます。
(1)専有住戸の受電については、個別に他の新電力と契約することができなくなる。
(2)電力料金の削減によるベネフィットは、管理組合が一括で享受する。
<ただし、管理費から支払われる支出が減るという意味では、組合員にも間接的なベネフィットはある>
(3)変圧器の点検のため、3年に1回全館停電を実施する必要がある。
(4)一括受電業者が倒産・廃業するリスクがある。
(3)は頻度自体は少ないものの、抵抗感のある方はいらっしゃるでしょう。
ただ、(4)のリスクが顕在化したとしても電力供給がストップして、マンション全館が停電になることはありません。
また、地域電力会社の送電線を経由している以上、電力の「質」自体は一切変わりません。
ここで素朴な疑問が生まれます。
このような高圧一括受電の特性を踏まえて、はたして全戸同意まで取り付けなくてはならないほどの重大な事案なのか?ということです。
区分所有法上で、もっとも厳格な決議要件が求められるのは、建替え決議です。
総組合員数及び総議決権数の各5分の4以上の賛成が必要です。
言い換えれば、全体の8割以上の賛成があれば建替え事業は実現できるわけです。
また、建替えに強固に反対する人が最大2割いたとしても、建て替えを円滑に進めるため、管理組合が反対者に対して住戸の売渡し請求ができるようになっています。
一方、高圧一括受電の導入についてはなぜか全組員の同意が必要です。
両者の重要性を比較考量した場合、どうにもバランスが悪いように感じます。
さらに言うと、
最高裁が判決理由として述べた「管理組合の総会決議が専有部分には影響しない」という点も、この建替え決議にはそぐわない気がします。
なぜなら、建替えは共用部分のみならず専有部分も当然対象になるからです。
というわけで、今回の判決理由についてはモヤモヤした気分になります・・。
<参考記事>
Copyright © ilodolist All rights reserved.