マンション管理組合も避けられない!「相続放棄」と「所有者不明」という厄介なリスク

最近、「老いた家 衰えぬ街」(野澤千絵著  講談社現代新書)を読みました。
本書では、不動産に関する「所有者不明」と「相続放棄」という2つのリスクに焦点を絞った解説がなされており、大変興味深い内容となっています。
著者は、まず所有者不明の不動産が増える原因が何かについて説明しています。
その理由として、わが国の民法上、所有者移転等の登記移転手続きが義務ではなく、相続後も未登記のまま放置していても罰則が存在しないことを指摘しています。
つまり、不動産の名義変更を行うかどうかは、相続人の判断に委ねられているのです。
また、相続発生の際に、遺産分割協議もされないまま多数の相続人による共有状態になっており、自分自身が相続人になっている事実さえ知らないケースも少なくありません。
その結果、相続人の数がねずみ算的に膨れ上がり、所有者を特定することがますます困難になる・・というわけです。
将来その不動産を売却したいと思っても、過去に遡って戸籍謄本などすべての相続人を探索・確定させ、その全員の合意を取り付けることが条件になるので、せっかくのチャンスを逃してしまいかねないのです。
国交省が実施したアンケート調査によると、分譲マンションでも連絡不通者が存在すると回答した比率が13%にのぼり、所有者不明問題が徐々に蔓延し始めているようです。
2つ目のテーマは、相続放棄です。
現行の民法では、相続人はすべての財産を引き継ぐのが原則とされています。
ただ、被相続人の負債や、引き継ぐ不動産にかかわる固定資産税や管理費などの負担を考えた場合、その資産価値に対して割りに合わないと考えて相続放棄するという選択肢も視野に入ってきます。
もし、マンション内に相続放棄された住戸が発生したらどうなるのでしょうか?
まず、次の区分所有者(承継人)が決まるまで管理費や修繕積立金が滞納されることになるため、管理組合としては資金状況が厳しくなります
利害関係人である管理組合としては、債権回収を早期に行うため「相続財産管理人」制度を利用することになるでしょう。
具体的には、家庭裁判所に相続財産管理人(弁護士や司法書士が一般的)の選任を申し立て、財産の清算を依頼することになります。
ただ、その際に、相続財産の管理費用や相続財産管理人の報酬を支払うための資金を確保するため、管理組合は「予納金」(数十万円〜100万円)を家裁に納めなくてはなりません。
その後、家裁で選任された相続財産管理人が当該住戸を売却した際に、その売却代金から滞納された管理費・修繕積立金をようやく回収することができます。
しかし、立地条件や築年数などの理由で売却見込みすら立たないようなマンションだと、予納金の回収すらおぼつかない恐れがあります。
また、老朽化が進んだマンションでは、管理組合の役員なり手不足等の問題を抱えていることも多いため、相続放棄された住戸が発生しても円滑にこうした対応ができず、後手に回ることも危惧されます。
分譲マンションでの合意形成は管理組合の総会の決議にもとづいて行われますが、相続放棄された住戸については「非賛成」の扱いになってしまいます。
仮にこうした住戸の区分所有者が全体の4分の1を超えた場合、管理規約の改正などの重要決議を成立させることができなくなってしまいます。
このようなリスクへの対応としては、相続放棄されることのないようにマンション全体の資産価値を長期的に維持できる運営を行うことが最善の策と言えるでしょう。
そのためには、計画的な修繕を円滑に実施できるよう管理組合を適正に運営していくことが必要です。
具体的には、
(1)管理委託費を含む維持管理コストを早期に適正化し、組合財政を健全化する。
(2)修繕積立金の負担が将来増えないよう早期に「均等積立方式」に切り替える。
(2)定期的な保守点検・劣化診断をもとに適切な時期と支出管理を行いながら計画的に修繕を実施する。
この3つが「鉄則」となります。
ただ、もっと重要なのは、誰が主体となってこの施策を実行していくのかです。
管理会社なのか?管理組合(理事長)なのか?
マンション管理士なのか? あるいは、行政なのでしょうか?
<参考記事>

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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