マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
7月15日付の朝日新聞に、マンション一括受電に関するトラブルを紹介する記事が掲載されていました。
記事を要約すると以下のようになります。
■都内にあるマンション(築6年・約120戸)の「高圧一括受電サービス」で、実際には住民の負担が割高になっていたことがわかった。
■エレベーターなど共用部の電気料金が通常よりも高くなっていて、各住戸で割安になった分を合わせてもなお高い料金を払わされていた。
■一括受電業者からは「大手電力会社の料金と比べて各戸の専有部で5%、共用部も少し安くなる」と説明を受けていた。
■しかし、管理組合が確認したところ、共用部の料金が東京電力と契約した場合と比べて約15%高く、専有部での割安分をあわせてもトータルでは割高だった。
■100戸以上のマンションでは、一括受電しなくとも共用部は高圧で契約するのが一般的であるが、このマンションの共用部は低圧に準じた単価が設定されていた。
■一括受電業者に記者の取材に対して、「トータルで割高になっていれば問題」と回答。そのうえで、必ず割安になるように読めるウェブサイトを改め、パンフレットの使用もとりやめた。ただし、他のマンションでも同様に課金しているとして従来の仕組み自体は改めないとのこと。
■一方、マンションを販売したデベロッパーは、「この規模であれば当然、共用部は高圧契約に準じた料金だと思っていた」と弁明。一括受電業者との契約内容の精査を怠っていたとしたうえで、管理組合に割高だった分の一定額を支払う意向を伝えた。
そもそも一括受電とは、共用部・専用部も関係なくマンション一棟全体の電力を高圧で受電するため、一括受電業者は低圧の場合に比べて約3割安い料金で電気を仕入れることができます。
にもかかわらず、共用部については低圧に準じた料金で管理組合に請求していたということは、その差額分を労せずして儲けていたことになります。
一方、専有部については低圧料金に対して5%割り引いて管理組合に販売してますが、業者はもともと3割安く仕入れているわけですから、こちらも当然ながら黒字です。
専有部の電気代(低圧の場合)を戸あたり平均月1万円と想定すると、
120戸の合計で年間1,440万円になります。
一括受電業者は、一律5%(年間約70万円)安くして管理組合に還元するため、1,370万円が売上げになります。
ただし、一括受電業者は(高圧のため)3割安く買えるので、その電力を約1,000万円で仕入れることができます。
したがって、業者の粗利益は、差引き370万円と想定されます。
一方、共用部の電気料金は不明ですが、
本記事によると「共用部の電気代が東京電力に比べて年間150万円高かった」とされていますから、一括受電業者の粗利益は少なくともこれを下らないでしょう。
したがって、一括受電業者の粗利益は、マンション全体では約520万円と予測できます。
このマンションの規模なら、変圧器等の設置工事費用などの初期投資としておよそ2千万円程度かかると想定されますが、上記の粗利があればたった4、5年で回収できる計算になります。
変圧器の耐用期間は30年以上あるため、長期にわたって管理組合と契約を継続できれば「かなりおいしいビジネス」だと言えます。
ただ、本記事にあるとおり、共用部の電気料金を故意に「低圧並み」に設定していたとすれば、「ユーザーの無関心と無知を利用した不誠実な商法」と言わざるを得ないでしょう。
このマンションでは新築時から一括受電を導入していたようですが、既存のマンションと異なり共用部の電気料金の実績がないため、管理組合には一括受電後の料金水準が適正かどうか判断できなかったことが「盲点」になったのではないでしょうか。
近頃は、新築当初から一括受電サービスが導入されている分譲マンションが多いようですが、念のため一度検証したほうが良いかもしれません。
【参考記事】
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