マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
都内のあるマンションでのコンサルティングの一環で、共用部の損害保険の診断も行ったところ、珍しいケースに遭遇したのでご紹介します。
このマンションは全体約400戸の大規模物件で、建物全体の評価額は約75億円。
そのうち、保険対象となる共用部分の評価が45億円です。
一方、現在の保険金額は12億円でした。
保険金の設定額が12億円ということは、
その共用部分の評価額に対して3割未満の付保率となってしまいます。
それが直ちに「間違い」と言うわけではありませんが、
損保業界の「常識」からすると、実は「過少」な水準なのです。
損保業界における一般的な保険金の設定の考え方は、以下の図で示されます。
【マンション共用部の損害保険額の設定の考え方】
まず、万が一マンションが火災等の事故で損壊してしまった場合、その再建に一体いくらかかるのかを知るために、マンションの「再調達価額」を算定します。
上図の例では、マンション全体の再調達価額は100億円。
このうち専有部分が4割、共用部分が残りの6割を占めると考えます。
したがって、保険の対象となる共用部分の再調達価額は60億円です。
実際の保険金額設定に際しては、
この再調達価額に上・下3割の範囲内で付保率を調整します。
一般的には「再調達価額の7掛け」で設定することが多いため、
保険金の設定額は42億円となります。
冒頭のマンションについてもこの方法で試算すると、
保険金の設定額は、およそ32億円(≒75× 0.6 × 0.7 )となります。
ところが、
実際は12億円の設定なので、その半分にも満たないわけです。
ただ、この問題の本質は、保険金の多寡よりも「誰がこの保険金が設定したのか?」ということです。
多くの例に漏れず、
こちらのマンションも管理会社が保険代理店を兼ねていました。
そしてこの保険金設定の経緯を管理会社に確認したところ、
「マンションの場合、全焼・全損のリスクがほぼないため、当社では再調達価額の15%〜20%を目安に設定している」との回答でした。
こうした管理会社の考え方について、管理組合側も十分に理解したうえで承認したのなら、自己責任の範疇ですから外部の人間がとやかく干渉する問題ではないでしょう。
しかし、管理組合に説明したところ、やはりその点のご理解は不十分でした。
さらに驚いたことに、その後相見積もりを取得したところ、
他社の保険会社に切り替えることで、保険料の負担を増やすことなく保険金額を適正な水準(32億円)に変更できることもわかりました。
「素人理事」が圧倒的多数を占めるマンション管理組合にとって、
セカンドオピニオンを取ることは、とても大切なことだと思います。
<参考記事>
Copyright © ilodolist All rights reserved.