マンション管理会社による組合備品の大量購入は違法か?

「Yahoo 知恵袋」に、マンション管理組合の備品購入に関する管理会社への不満について投稿がありました。

その投稿を要約すると以下の通りです。

■ 一般(管理費)会計の消耗備品費について、過去の実績を確認したところ、直近2年間についてはその支出が従来比でおよそ2倍に増えていることに気づき、何をどれくらい購入したのかを管理会社に照会した。

 

■ その結果、従来は1年で平均6枚しか購入していなかったモップを60枚も購入していることが分かった。(メーカーに問い合わせたところ、1枚で3ヶ月くらい使用できるとのこと。)

 

■ 管理会社によると「生乾きの匂いが取れないので廃棄した」との回答であった。同様に、ゴミ袋も過去使用量の30倍ほど購入していた。

管理員が業者に発注するにあたり、管理会社にFAXしてそのまま会計にまわり支払われていた模様。

 

■ 管理会社は管理員が着服しているわけではなく、マンション内の清掃に使用しているので問題とは考えていないようだ。

■ 管理組合の財産を無駄に使用したことについて納得できない。管理会社に法的な責任を問えないのか?

 

このようなクレームの事例は、以前別のマンションでも耳にしたことがあります。

 

営繕工事などと同様に、組合備品類の購入も管理会社が媒介するのが一般的です。

 

組合側にとっては、管理会社が気を利かして代行してくれれば、手間が省けるのは確かです。

 

一方で、管理会社にもこうした業務で付帯収益を計上できるという「うまみ」があります。

 

このマンションではいつしか何らかの理由でそれが「エスカレート」し、異常と感じる金額まで膨らんでしまったのではないでしょうか。

 

この相談者の投稿内容が事実なら、管理会社の説明も説得力が乏しく、正当性を疑われても仕方ないでしょう。

 

ただ、この投稿者の相談内容は、さらに管理会社の「法的責任」まで問えないかということですが、それは備品の購入手続きがどのようになされたかによります。

 

注目すべきポイントは、

「管理員が業者に発注するにあたり、管理会社にFAXしてそのまま会計にまわり支払われていたようだ」という部分です。

 

この「会計」とは管理会社の会計部門のことを指しているのでしょうか。

それなら、管理組合の事前承認を経ていないので原則的には責任を問えると思います。(ただし、後述の通り「例外」もあります)

 

ただ、管理組合にも「会計理事」が置かれている場合もあります。

購入の意思決定に際して会計理事(もしくは理事長)の承認手続きを経ていたら、管理会社の責任は問うことは困難でしょう。

 

その場合は、管理会社ではなく、承認した組合役員側に責任が生じます。

その責任とは、民法上の「善管注意義務違反」です。

 

管理組合の管理者(理事長)も、各組合員とは委任の関係(区分所有法28条)にあるため、善管注意義務を負っています。

この義務を怠ったことに起因して、管理組合に損害等が発生した場合は、損害賠償責任を問うことができます

 

ただ、投稿のケースは、いずれ使用する消耗品の購入が過剰であった程度であり、組合が「損失」を蒙ったとまでは言いづらいでしょう。

 

なお、組合の事前承認を得ず備品を購入した場合でも、

管理会社の責任を追及する前に確認してほしいことがあります。

 

管理会社と締結している委託契約においては、いわゆる「事務管理業務」としての組合経費の承認・支払いに関し、以下のような取り決めがなされているケースもあるからです。

<条文例>

■ 管理会社が、管理費会計の収支予算にもとづき、管理組合の経費について管理組合から包括事前承認を得たものとし、組合の収納口座から支払う。

■ 経費支払いの一部分については、○○銀行のパソコンバンクを使用して行う。この場合、管理組合が管理会社をパソコンバンク取引の代理人と定め、○○銀行へ別途代理人選任届を提出する。

■ 上記「経費」の支払範囲を管理費会計の予算科目及びその予算金額以内とし、管理組合はこれを包括的に承認する。

 

つまり、こういうことです。

仮に、管理組合の年度予算として「備品消耗品費」がたとえば10万円と計上されていて、総会でも承認済だとします。

 

その場合は、管理組合が10万円を上限として備品消耗品費を支出することを包括的に承認していることになるため、個別に組合の承認を得なくても管理会社が経費の支払いを代行できる、というわけです。

 

予算額を超過しない限り、組合の承認を個別に得る必要がないので、最初の予算額の設定が妥当かどうかを慎重に判断する必要があるでしょう。

 

したがって、以下の2点を押さえておくことをお勧めします。

(1)組合出納業務に関する取決め内容を管理委託契約書で確認する

(2)備品購入にかかる組合内の承認フローを確認する

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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