なぜマンションの「個人賠償責任補償特約」はわかりにくいのか?

2月19日付の「INSIGHT Now」という情報サイトに、マンションの「個人賠償責任保険」の不思議という記事が掲載されていました。

 

www.insightnow.jp

大変興味深い記事なので、ご紹介しましょう。

以下は、記事の要約です。

 

■ マンション共用部の損害保険には、火災保険等とともに「個人賠償責任補償特約」が付帯されているのが一般的だ。

 

■ ある管理組合で、マンション総合保険の中の「個人賠償責任補償特約」が大幅値上げになることが話題になり、出席者から「なぜ管理組合が入らなければいけないのか?」という質問が挙がった。

 

■ この質問に対して、以下の通り理事は回答した。

「マンションの階上の人が漏水事故を起こしたために下の人が被害を受ける場合、階上の人に損害賠償義務が発生する。その際、加害者が保険に入っていないと(資力がなく)賠償できないケースがある。そのため、被害者は泣き寝入りを強いられることがないよう管理組合で保険に入っている」

「この特約は、水漏れに限らず、例えば子供が外で自転車事故を起こして他の人にケガをさせたりするなど、いろんなケースもカバーされる。」

 

■ この回答に対してさらに質問がなされた。

「この保険は、マンション外で起きた事故もカバーするようだが、マンション内の事故だけに限定にすれば保険料を安くできるのではないのか?」

 

■ この質問に対する理事の回答は、

「どの保険会社も横並びで、マンション内の事故だけをカバーするような保険または保険特約は無い」とのことだった。

 

■ さらに、以下の回答が加わった。

この保険特約がカバーするのは、居住者だけ。居住していない区分所有者はカバーされないそうだ。管理費を通じて間接的に保険料を支払っている『このマンションに住んでいない区分所有者とその家族』は、このマンションに来た時に何か事故を起こしてもこの保険でカバーされないけど、管理費を支払ってもいない『借りているだけの居住者』は外で事故を起こしてもカバーされる」

 

■ 「それって一体、本当は何のための保険なんですか?」と質問者は呆れて、出席者一同も釈然としない雰囲気になった・・。

 

共用部における様々な損害等に伴う経済的リスクをカバーするために、管理組合が加入するマンション保険は、下記の通り「基本3点セット」と地震保険で構成されています。

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「施設賠償責任補償」は共用部、「個人賠償責任補償」は(主として)専有部にそれぞれ起因する偶発的な事故で他人の身体や財物に損害を与えた場合に保険の適用が受けられます。

 

マンションで実際に発生する保険事故の約7割は、漏水事故だと言われています。

 

そして、この「施設賠償責任補償」と「個人賠償責任補償」という2つの補償が、専有住戸内の漏水事故が発生した際に役立つのです。

 

たとえば、共用部の給・排水管に起因する漏水と判断されれば、「施設賠償責任補償」の特約を適用できます。

 

一方、居住者の不注意等で他の住戸に漏水が発生した場合は、管理組合として責任を問われることはありません。加害者である居住者が被害者に賠償責任を負うことになります。

 

しかしながら、多額の賠償を求められた際に、加害者側が何ら保険に加入していないためにいつまでも解決せず、被害者があきらめて泣き寝入りすることになる場合もあります。

 

そこで、被害者の早期救済を目的に一般個人でも加入できる個人賠償責任保険をマンション保険の主要な特約として付帯することが一般的になったのです。

 

しかし、ここで別の悩みが生じます。

 

それは築年数の経過にしたがって、マンション保険料の負担が増えるということです。

<築年数の経過 → 設備の経年劣化 → 漏水等事故の増加 →  保険料の増額>

 

また、冒頭の記事の説明の通り、

個人賠償責任補償は、マンション外で発生した事案についても適用されます。

 

そのため、経済的負担が増えてくると「マンション内で発生した事故に限定して補償範囲を狭めれば、保険料が下げられるのではないか?」という疑問が生じるのも無理はないかもしれません。

 

ただ、個人賠償責任補償は、「既存の保険を便宜上特約としてマンション保険にくっつけた」という経緯から、そもそもマンション内の事故に対象を限定するという発想がなかったのだと思われます。

 

最後に、重要な指摘をしておきます。

個人賠償責任補償の特約が適用できるのは、区分所有者もしくは居住者です。

 

したがって、冒頭の記事では「居住していない区分所有者は補償の対象外になる。管理費を通じて間接的に保険料を負担しているのにおかしいのでは?」というくだりがありますが、その理解は正しくありません。

 

具体的に言えば、補償対象者は以下の通りです。

区分所有者本人(居住要件は不要)

■ 現に居住している区分所有者の家族(=居住者)

■ 現に居住している賃借人とその家族(=居住者)

となります。

 

<参考記事>

suumo.jp

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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