マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
最新の週刊エコノミスト(6月18日号)では「マンション管理の悲劇」と題した特集が組まれています。
主だった内容は、
1)マンションの管理不全を防ぐために自治体に広がる監視制度
2)高齢の区分所有者の死亡に伴う滞納や相続放棄の問題
3)廃墟と化したマンションに対する行政代執行の事例
4)新築時の施工不良チェックの勧め
5)高騰したマンション価格の今後動向について
といったところです。
ひと通り目を通しましたが、他誌の類似の特集ではあまり見かけないテーマとして、4)の「新築時の施工不良チェックの勧め」は押さえておくとよいと思いました。
記事の要約は、概ね以下の通りです。
■ 住宅品質確保法(品確法)では、以下を対象に物件引渡しから10年間、売主が瑕疵担保責任を負うことが義務付けられている。
・構造耐力上主要な部分
(柱、梁、耐力壁、基礎、地盤、土台などの構造躯体)
・雨水の侵入を防止する部分
(外壁や屋根の仕上げ、下地、開口部など)
■ 上記の法律に加えて、デベロッパーなどが加入している(一般社団法人)不動産協会が定めている「中高層住宅アフターサービス規準」もある。これは、一定の不具合があれば売主等が無償で補修する内容を定めたもので、建物の部位ごとにサービス期間(最大10年)を設けている。
■ ところが、一般的なマンションの場合、築12年目以降に大規模修繕工事を実施することが多いため、その時点で瑕疵や不具合が発覚しても「時すでに遅し」で売主等に補修を請求することが難しくなる。
■ このため、築10年を経過するまでに、建築士などの外部専門家を入れて調査診断を実施することを勧める。
先日も、ある管理組合の役員さんから、「築10年以前に発覚した最上階住戸の雨漏り問題が現在も解決に至らないまま続いているが、このままでは保証期間が終了してしまう。どうすればよいか?」というご相談を受けました。
管理組合でありがちなのは
・管理組合を通さずに区分所有者自身が個別に売主に相談しているケース
・売主や施工会社に対してのみ補修の相談や依頼を行なっているケース
というパターンです。
しかし、これでは残念ながら本当の問題の解決に至らないリスクがあります。
特に雨漏りなどの現象は、構造躯体を含む共用部の不具合が原因である可能性が高いです。
したがって、漏水発生箇所が専有住戸内であっても、管理組合にまず現況を報告してマンション全体の問題として認識することが大切です。
その際、すぐに管理会社に相談しがちですが、売主のデベロッパー系列会社の場合には、利害相反の関係からなんとなくスルーされるなど、真摯な対応がなされない場合がありますので注意が必要です。
また、売主が対応してくれた場合でも、記事でも紹介されているように、
「施工自体には問題はなく、経年劣化が原因」と抗弁されるケースが多いでしょう。
そのため、外部の調査会社や建築士などの専門家を導入することが有効だと思います。
しかし、別途費用がかかるため、
予算を新たに計上したり、そのために総会を開催しなくてはなりません。
そのため、手間を惜しんで導入に消極的になる管理組合が多いのが実情です。
ただ、記事でも紹介されているように、コンクリート内部の鉄筋が破断していたり、耐震スリット(緩衝材)が入っていないなどの施工当時の重大な欠陥も見つかる場合があります。
実際に、昨日の新聞記事でも大和ハウスが販売した分譲マンションにおいて、耐震スリットの設置を失念していたために売主自ら補修を行なったという事案が発生しています。
<参考記事>
本件については売主の自主検査で発覚したようですが、管理組合が自ら発見した場合には、民法上の「不法行為責任」を売主に追及することができます。
<参考記事>
なお、漏水の原因調査については、マンション共用部で加入している損害保険でその費用が賄えるのが一般的です。
こうした知識は、組合役員さんならぜひ押さえておきたいものです。
<参考記事>
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