マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
11月12日付けの週刊現代ビジネスに、「高額化するタワマンの管理費、放置しておくとこんなに資産価値が下落する!」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ なぜ管理費は高くなってしまうのか?「管理会社」が絶対に知られたくない「闇」について、マンション管理のからくりを知り尽くす3人(マンション管理士、住宅ジャーナリスト、元管理会社社員)が座談会を行った。
■ タワマンの管理費が高騰している。70平方メートルくらいの物件で、3万円近い金額になっている。
■ おかしいのは、同じ管理会社のほぼ同様のサービスのマンションでも物件によってはかなりの違いがあること。
■ たとえば、都心の駅直結の高級タワマンの「Sタワー」は2つのラウンジに加えて、ゲストルームやワーキングルーム、ジムなど多彩な共用施設を誇るが1平方メートルあたり210円程度。
■ 一方、この物件を管理する大手財閥系管理会社が管理する別のタワマン「Pタワー」は1平方メートルあたり約430円で、その差は2倍以上になっている。
■ 実は「Sタワー」は理事長が管理委託費をはじめとする支出を見直す改革を実現したマンションである。
■ 管理会社の収益源は、管理組合が集めた管理費と修繕積立金などの維持費なので、根本的には割高なサービスほど管理会社が儲かるという利益相反の関係にある。性善説を信じて管理会社に任せっぱなしだと損をすることがある。
■ マンションの管理・維持費を高いまま放置すると、最終的には資産価値に悪影響を与えてしまいかねない。実際、中古マンションの市場を見ても相場よりも安く感じる物件は多くの場合は維持費が高い。
■ これは単純な理屈で、管理費と修繕積立金の合計が同等の物件より2万円高いとすると、ローンを組む35年間で840万円も支払いが多くなるからだ。
■ それでは、マンションの維持費、とくに毎月の管理費は「下げられるのか」といえば、答えはYES。とくに値下げに応じてもらいやすい物件は、分譲後一度も管理委託費の減額交渉が行われていないケース。
■ 竣工後の管理会社は無競争のまま分譲会社の系列子会社に決まっていることがほとんどだ。親会社の収益確保のため、割高な随意契約になっていることも多く、そこに管理費値下げの交渉の余地がある。
■ 具体的な手段は、競争原理の導入に尽きる。複数の同業他社に管理会社変更(リプレース)の見積もりを取り、それを現在の管理会社に突きつける。
■ そうすると、現行の管理会社が慌てて「管理委託費」と外注費の見直しなどを行い、管理委託費の引き下げに応じることも多い。それでも値下げに応じないならば、現行の管理委託費より低い金額を提示した管理会社を変更すればよい。
■ こうした改革をすれば、昨今でも1平方メートルあたり300円を超えるような高額な管理費の場合、200〜250円程度まで下がる可能性は十分あるし、実際、今年に入っても管理費を減額したマンションの事例が複数ある。
■ 割高かもしれない管理委託契約を続けているのは、機会損失にもつながる。たとえば500戸のタワマンで月2万円の管理費が1万5000円になれば、年間で合計3000万円。10年間で3億円の経済効果になる。この金額を修繕積立金会計に振り向ければ、段階的に引き上げられる修繕積立金の上昇を抑えられる。
■ こういった維持費の改革は、管理組合の理事会が主導するが、管理会社の交渉など多大な負担もかかる。手間を避けたければ、理事に変わって面倒な見積もり作業を代行してくれる外部のサービスもある。
■ 「管理費が安くなると、その分、サービスが悪くなるのではないか?」という不安があるかもしれないが、そもそも他社への見積りは過剰なサービスを見直しながらも、「現在と同等レベルの管理体制」を条件にお願いするものなので、管理会社が変わったとしてもサービスが悪く感じるということはない。
■ 基本的に現行の管理会社に不満があって変更される場合が多いので、むしろ変えた後のほうがサービスがよくなったという声が多いのが実情。もちろん、管理会社を変更したことよる些細な変化を気にする人もいるかもしれないが、毎月の管理費が安くなったり、その分のおカネで修繕積立金の値上げを回避できたりするなど、大半の区分所有者にとって金銭的なメリットのほうが大きい。
この記事では、マンションの管理費を1平方メートルあたりの月額で記載していますが、新築マンションの平均月額は@200円強とされています。
<参考記事>
ieul.jpただ、記事の後半で述べられている管理会社に支払う管理委託費(≠管理費)を含む日常の維持費(水光熱費、保険料、組合運営費など)の「原資」になるのは、この管理費だけではありません。
管理組合の一般会計では、駐車場使用料などの各専用使用料を重要な収益源としているケースが圧倒的に多いのが実態です。
<参考記事>
つまり、<管理費+駐車場使用料等>を原資として、管理委託費や水光熱費、保険料等を支払っているのが一般的なのです。
したがって、管理費の水準だけを他のマンションと比較しても、管理会社の業務委託費が割高なのかどうか判断できかねる、ということです。
逆に言えば、駐車場使用料収入を「隠れ蓑」にして、管理会社が希望する金額で管理委託費を設定できると言えます。
では、なぜそんなことが可能になのか? その答えは、本記事の要約にもあります。
「竣工後の管理会社は無競争のまま分譲会社の系列子会社に決まっていることがほとんど」だからです。
したがって、必要なことは、管理委託契約に記載された管理仕様と、清掃や設備保守管理、事務管理業務といった業務ごとの金額を精査し、競争原理を取り入れて割高な部分を適正化することです。
上記の通り、竣工当時はほぼ管理会社の「言い値」で管理委託費の水準が決定されているため、競争原理によるスクリーニングがなされていません。
そのため、築年数、物件規模や立地条件にかかわらず、どんなマンションも少なくとも一度はこのスクリーニングを実施すべきです。
管理仕様(清掃や設備点検の内容と頻度など)の条件を各社一律になるように揃えれば、基本的に「安かろう、悪かろう」になるリスクもありません。(ただし、フロント社員の人的な力量や会社の組織対応力等は除きます)
今回紹介した記事の重要な論点は、管理委託費を適正化せずに割高なまま放置することで、管理費も他のマンションに比べて割高と認識されると、リセール市場で敬遠されやすくなるため、資産価値が相対的に下がるリスクが上昇する、ということでした。
マンションの購入に際して、自らの可処分所得に占める毎月のランニングコスト(管理費と修繕積立金の合計)の比重を考えて購入するかどうかを判断する大きな要素になります。
竣工時の修繕積立金は人為的に低く抑えられているのが一般的なため、経年とともに当初の3〜4倍に段階増額されていくことを余儀なくされるのが実情です。
経年的な修繕積立金の増額が避けられないうえに、管理費も割高と判断されれば、中古市場でそのマンションが敬遠されるのは必然です。
そのため、当社は顧問先の管理組合の管理コストを早期に適正化し、その結果生じる毎年の剰余金を修繕積立金会計に振り替えることで将来的な修繕積立金の増額リスクを抑え込むことを管理組合に提案しています。
その結果、過去のブログでも下記の通りコンサルティングの事例を紹介していますが、顧問先マンションで組合財政の健全化、ひいては資産価値の維持向上に貢献していると自負しています。
<参考記事>
Copyright © ilodolist All rights reserved.