「築浅の駅近タワーマンション」がなかなか売れない事情とは?

9月7日付けの現代ビジネスに、「駅近タワマンなのになかなか売れない…成約寸前でいつもダメになる、意外すぎるワケ」と題した記事が掲載されていました。

 

gendai.media

本記事の要約は以下の通りです。

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■ 8年ほど前に新築で購入したタワマンに住んでいる50代の夫婦は、より都心に近いエリアに新しいタワマンを買ったため売却しようとしたが、「ある点」がネックとなり、引き合いがあっても成約に至らないと言う。

■ そのマンションは、山手線から数駅離れたややマイナーな街ではあるが、駅から近く、500戸を超える大規模物件。駅前の再開発も進み、大きなスーパーも近くにあり、住みやすそうな街だ。

■ 実は、そのタワマンの場合、管理費と修繕積立金が不相応に高すぎるという問題があった。プールや温浴施設などの豪華な共用施設はほとんどないにもかかわらずである。

■ ただ、管理費が高すぎるなら管理会社と交渉すればよく、もし管理会社との交渉が不調ならリプレイスしてしまえばいい。昨今 の人件費の上昇傾向の中、管理会社側に有利な市況ではあるが、築浅の大規模マンションであればリプレイスのコンペをすれば、立候補する管理会社は決して少なくないはずだ。

■ ところが、そのタワマンの場合は、一般のマンションとは事情が大きく異なっていた。と言うのも、管理会社と契約条件の値下げ交渉はもちろん、管理会社を変更することすら事実上不可能な状況だからだ。

■ それどころか、管理会社は自由に管理費を値上げすることもできるし、修繕工事も自社に受注できる。大規模修繕工事も、管理会社がノーコンペで受注するはずだ。その受注によって、管理会社はかなりの利益を得られるだろう。それは、逆に言えば区分所有者にとって不利益とも言えよう。

■ なぜそんなことになっているのか。それは、管理規約に盛り込まれた次の条文にある。「当管理組合の管理者は、管理会社とする」つまり、理事長職を管理会社が担っているのだ。

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この記事は、先日投稿した記事のテーマと密接な関係があります。

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

つまり、本記事の要点は、管理会社が理事長を務めるという「第三者管理方式」のマンションのため、高すぎる管理費の見直しが事実上できずに売りづらい状況になっている、ということです。

 

「第三者管理方式」の類型としては、以下の3つのケースがあります。

1)理事長=外部専門家型
    2)外部管理者&理事会監督型
3)外部管理者&総会監督型

 

察するに、本記事のマンションは上記3)のケースに該当するものと思います。

 

と言うのも、1)や2)のケースなら、区分所有者が理事長以外の役員に就任しているため、管理組合と利益が相反する行為(例:管理会社に修繕工事を発注する、管理委託費を値上げする)に歯止めをかけることが可能だからです。

 

理事会が設置されない場合には、区分所有者が輪番制で役員に就任する負担から解放されるので、一見よさそうです。

 

しかしながら、本記事のように、管理者と管理組合の利益相反の問題や、第三者の管理者の解任を検討することが必要な事態が生じた場合に自力で解決できない状況に陥るリスクがあります。

 

そのため、マンションの購入を検討する際、管理者の利益相反行為を阻止できる定めが管理規約にあるかなどのチェックが必要です。

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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