財政状況の悪化に悩むマンションへの管理見直しのヒント

11月19日付けの東洋経済オンラインに「「管理組合の資金難」 築浅も無関係でない深刻理由」と題した記事が掲載されていました。

 

toyokeizai.net

本記事の要約は以下の通りです。

■  マンション管理組合が抱える深刻な課題のひとつが財政難である。ほとんどの管理組合の会計は、一般(管理費)会計と特別会計に区分されている。特別会計(修繕工事費)に関しては、新築当初はマンションの修繕積立金が低く見積もられている場合が多く、年数を経るごとに値上がりするケースは少なくない。また近年の人件費や建築コストの上昇などによる支出増が予想されている。

■ 一方、 一般会計もまた同様に厳しい状況にあり管理組合の悩みの種となっている。管理費の会計収支を圧迫する要素は大きく3つある。1つ目は、管理会社からの管理委託費の値上げを求める管理会社が増加している。 第2に、資源価格の高騰に伴う電気料金の値上げである。

■ 3つ目の要因が、駐車場の空き区画の増加だ。居住者の高齢化によって車を手放すケースが増えるとともに、若い世代の車離れも進んだため、駐車場使用料収入の減少に見舞われている。

■ あらためて見直すべきなのが管理会社との関係性である。「管理会社に不満があるなら、もっと条件のいい会社にリプレイスすればいいと思うかもしれないが、そうシンプルな話ではなくなっている。

■ 以前であれば、好立地の築浅マンションには安価な委託費を提示する管理会社が複数手を挙げてきたが、現在は積極的に取り組む管理会社は少なくなってしまった。

■ 業務委託費が下がらないばかりか、マンション管理・維持の水準が現状以下になってしまう可能性が高まった。

■ 管理会社を取りまく背景、経営状況も大きく変化している。とりわけ人件費の高騰は著しい。最低賃金の上昇や少子高齢化により採用コストも上昇を続けている。日常的な管理業務を担う管理員の確保も難しくなりつつある。

■ そもそも管理員には、定年退職を迎えた人材がセカンドキャリア先として選択するケースが多く存在した。ところが企業の定年延長や再雇用の動きが活発化すると、あえて管理員に応募する人材は少なくなった。 管理会社の人的リソースを考えても、現状の管理棟数ですでにギリギリの状態である。

■ このような理由から管理委託費が上がらなければ、契約の継続を辞退する管理会社も出てきている。また管理会社のリプレイスを検討する管理組合に対しても、現状の組合のあり方を含め、何らかのトラブルを抱えているリスクも鑑みて慎重な姿勢を取る管理会社も少なくない。結果的に管理組合がリプレイス先を見つけられない事態に陥ってしまう可能性もある。

■ 本来、管理会社の仕事とは、理事会からの要望を丁寧に聞き、会社との間を取り持つ重要な役割を担う人材だ。円滑にマンション管理を行うためには高いコミュニケーション能力が不可欠となり、「人」による部分が大きい職務でもある。

■ そのため、管理会社のリプレイスを検討する前に、別のフロント担当者、あるいは管理員への担当変更を切り出すなど、段階的に申し入れを行うのも一つの手と言える。

修繕積立金の増額リスクだけでなく、昨今の環境変化によって管理組合の財政状況が悪化しているのは事実です。

 

顧問先のマンションでは、高圧の電気料金が昨年に比べて5割も上昇し、前期よりも100万円以上収支が悪化しました。

 

新電力の多くは、地域電力会社の料金に揃えるのが精一杯の状況で、新規受付も中止しています。

 

そのため、以前のように電力会社の変更でコスト削減ができなくなったうえに、以前よりも電気料金が上昇するという憂き目に見舞われています。

 

また、以前から管理員や清掃スタッフの人件費も上昇しており、管理委託費の値上げを求める管理会社も出てきているのは事実です。

 

ただし、本記事のように「リプレイスをしてもコスト削減は困難」というレベルではないと思います。

 

もともと、デベロッパー系列の管理会社に委託している場合、これまで一度も見直されていない契約ならば、一定の削減余地があるのが一般的です。

 

それは、事前に相見積もりを取得するなど競争原理が導入されずに管理会社を選定しているからです。

 

管理員や清掃業務の費用は上昇しているとしても、設備管理や事務管理費にかなり贅肉を含んで金額になっていることも珍しくありません。

 

多くの管理会社は、こうした割高な部分を「棚に上げ」て、一部の費目の値上がりで収支が悪化した部分を取り戻すために管理組合に値上げを要請しているのです。

 

こうした管理会社に対峙し、しっかりとした知見をもとにビジネス交渉のできる管理組合は基本いないのが実情です。

 

そのため、言われるがままに増額改定に甘んじてしまうわけです。

 

管理委託費の見直しについてもう一つ大切なテーマがあります。

 

それは「管理仕様の見直し」です。

 

管理員の勤務時間や清掃員の派遣、設備保守点検の頻度などを精査すると、そのマンションの立地条件や規模に鑑みると明らかに「過剰」と思われる仕様が見られるケースが少なくありません。

 

たとえば、

■ 管理員の勤務時間が長すぎるケース

小規模マンション(29戸)で、グレードも標準的にもかかわらず、1日の勤務時間が実質6時間で設定されており、その費用が管理委託費全体の50%超を占めていました。

そのため、当社から1日4時間への短縮を提案し、従前に比べて管理員業務費が45%下がりました。

 

■定期清掃の回数が多すぎるケース

標準グレードの小規模マンション(31戸)では、管理仕様を確認したところ、床の機械洗浄を毎月(年12回)実施していました。

1回あたりの単価は妥当な水準でしたが、年4回もしくは6回が標準的とされているため、半分に頻度を落としたところ、当然ながら清掃費用は半額になりました。

 

■管理員とは別に清掃員が派遣されているケース

55戸のマンションでは、従前の管理仕様が以下の通りでした。

・管理員 :週2日・3時間/日勤務

・日常清掃:週3日・4時間/日勤務

 

詳細を確認したところ、それぞれ別のスタッフが実施していることがわかりました。

 

物件規模が100戸前後であればわかりますが、この規模なら日常清掃を管理員が完全に兼務することが可能です。

 

また、50戸の規模にしては管理員の勤務日数も1日の勤務時間も少ないため、週4日・4時間/日勤務に増やし、清掃も兼務してもらうことにしました。

 

その結果、管理員と日常清掃の合計費用を増やさずに契約を変更しました。

 

このように管理会社を変更しなくても現在の委託契約を精査して見直すことで、コストアップを回避する方法もあるのです。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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