マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
12月7日付けの朝日新聞に、「マンション新制度 管理に注目、「二つの老い」に備え」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ 自分の住む分譲マンションは安心して末永く暮らせる場か。それを知るカギ、管理に関する新制度が二つ、今年度から官民で始まった。
■ 建物の修繕計画やそのための資金の確保、管理組合の運営状況などが適切か、統一の指標で確認する取り組みだ。
■ その一つは、マンション管理業協会の「適正評価制度」。管理水準を採点して、その結果を6段階の評価で分ける、いわば管理組合の通信簿である。11月末現在で全国149物件に42~100(満点)の点がつけられ、協会のサイトで公表している。
■ 「マンションは管理を買え」と言われながら、これまで明確な評価基準がなかった。新築マンションの価格が高どまりして中古物件が人気を集めるなか、買い手は肝心の管理の実態をつかめない。それが「見える化」すれば、取引の参考になる。
■ もう一つは、各自治体による「管理計画認定制度」。国の指針をもとに自治体が基準を設け、それを満たしたマンションにお墨つきを与える。こちらは点数をつけず認定の可否のみだ。
■ 両制度は時を同じくして始まったこともあるが、その違いがわかりにくい。例えば適正評価制度の★の数は不動産の流通サイトでも掲示されるが、自治体の認定制度の情報はこれから。
■自治体の認定を受けた物件は、住宅金融支援機構のローン金利引き下げの優遇があるが、適正評価制度は対象外だ。また、管理計画認定制度に取り組んでいない自治体内ではそもそも認定を得られない。
■ さらに言うと、評価や認定を受けることは「義務」ではないから、しくみやメリットを管理組合にわかりやすく伝えないと利用するマンションの数は伸びそうにない。
■ 多くのマンションが使ってこそ、評価指標として機能する。ローン金利の引き下げだけでなく、税の優遇や補助金、売値に反映されるしくみ作りなどメリットをさらに工夫しないと理想への道は険しそうだ。
■ 二つの新制度をどう生かすべきか。まず管理組合は、住人の関心や意識を高める手立てにできる。認定をめざして協力を呼びかけたり、点数を通して管理の姿を自己点検したり。メリットは今後増えると期待しつつ、新制度を機にマンションの姿を内外に伝え始める効果は大きい。情報公開が運営の透明性や構成員の参加意識を高めるのは、企業も管理組合も同じなはずだ。
■ 自治体は対応が難しい。管理の不十分な物件が参加せず取り残される恐れもある。その実態をつかみ、管理組合への指導など個別の対応が必要になる。マンション管理行政は自治体にとって新分野。都市の一部を除いて人材やノウハウが乏しい。
■ 新たなしくみが生まれた背景には、建物と住人というマンションの二つの老いがある。老朽化して修繕が要るのに、高齢化で管理組合が動けず対応できない。そんな問題がこれから増えると心配されている。
■ 分譲マンションは今や686万戸、国民の1割が住んでいる。二つの老いに向き合うため、関心をどう高めるか。定期検診がヒトの健康への心持ちを変えるように、新たなしくみが住人の心を動かすかに注目している。
今年の4月から分譲マンションの管理状況を評価するための新たな制度が相次いでスタートしました。
まずは、「管理計画認定制度」です。
地方公共団体(正確には「自治体」という表現は誤り)が各マンション管理組合が一定の管理状況を確保していることについて「お墨付き」を与えるものです。
たとえば、長期修繕計画が適切に作成されているか、長期修繕計画にもとづいた修繕積立金が徴収されているか、組合の総会や理事会の定期的な開催など、組合活動が円滑に行われているかといった点をチェックします。
その結果、適切な管理計画を有するマンションが認定を受けられます。
認定が受けられなかった場合には、各地方公共団体が行政として指導・助言、勧告などを行うことによって管理水準の底上げを図る、というものです。
ただし、この認定を受けることは、少なくとも現時点では管理組合の「義務」ではありません。
続いて、「マンション管理適正化評価制度」です。
一社)マンション管理業協会が、マンションの適正な管理が促進され、良質な管理が市場で評価される新しい仕組みをつくるため、全国共通の評価基準を制定のうえスタートさせました。
具体的な評価項目として、「管理体制関係」「組合収支会計」「建築・設備」「耐震診断関係」「生活関連」という5つのカテゴリに分けられ、下記のような配点が定められています。
S・・・特に秀でた管理状態(90点以上)
A・・・適切な管理状態である(70点以上)
B・・・管理状態に一部の問題あり(50点以上)
C・・・管理状態に問題あり(20点以上)
D・・・管理不全の恐れがある(19点以下)
実際にマンションを評価するのは、本協会指定の講習を修了した管理業務主任者もしくはマンション管理士です。評価結果については、本協会のサイトに公開されます。
もちろん、この評価を受けるのは任意であり、費用もかかります。
実は、これらの制度に加えて、すでに2015年から類似した評価制度が運用されているのをご存知ですか?
それは、日本マンション管理士会連合会(日管連)による「マンション管理適正化診断サービス」です。
本サービスでは、日管連から認定を受けたマンション管理士がマンションの管理状態を診断のうえ、S・A・Bの3段階で判定します(評価結果の有効期間は5年)。
2022年6月時点で、すでに累計約1万5,000棟のマンションが診断を受けています。
(下の記事参照)
www.nisshinfire.co.jpこの診断を多くの管理組合が受診しているのは、診断自体が無料であることに加えて、その結果に応じて「マンション保険料の割引き」が受けられるという明確なベネフィットがあるからです。
それまでの損害保険料は、マンションの築年数にもとづきほぼ損保各社一律で算定されていましたが、「管理状況の優れたマンションであれば高経年でも事故発生リスクは小さい」とみなされ、保険料の値引きのある保険商品が新たに登場し、この診断サービスを受けることが見積もりの前提条件となったのです。
なお、日管連は、株式会社LIFULLと提携し、管理組合の事前了解を得たうえで「S評価」および「A評価」の物件を対象に、2021年2月から不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」において診断結果の掲載を開始しました。
<参考記事>
したがって、現状では、管理計画認定制度、管理適正評価制度とともに、3つの「似て非なるマンション管理評価制度」が並行して運用されていることになります。
管理計画制度は、主に「管理不全予備群」のマンションをあぶり出し、その増加を抑止することが目的なの対し、管理業協会や日管連は、中古マンションの市場評価に資するためのデファクト・スタンダードを目指しているという違いがあるように思います。
いずれにしても、これまで見えづらかったマンション管理の実態が組合内部だけでなく外部に公開されることによって、物件ごとの優勝劣敗が明らかになり、それが流通市場における公正な評価につながるのであれば歓迎すべきことではあります。
さらに、日常の管理や修繕に対して無関心な傾向の強い管理組合やその区分所有者が、自らの大切な資産の価値を維持しようというモチベーションが働くきっかけになり、これまでのように組合活動に無関心でいられなくなることを期待したいところです。
<参考資料> 上記3つの制度概要とその相違点
ただ、最後に紹介した「マンション管理適正化診断サービス」を除く2つの制度については義務でもなく有償なのに対し、それを受けることによるインセンティブ(誘因)についてはまだ不十分な状況です。
現時点で言えば、管理計画認定制度の認定を受けた場合は、2つの優遇措置が受けられることになっていますが、率直に言ってさほどのインパクトはありません。
(1)融資金利の引下げ
住宅金融支援機構の融資として「フラット35」、「マンション共用部分リフォーム融資」がそれぞれ引き下げられる。
(2)「マンションすまい・る債」の利率上乗せ
住宅金融支援機構が発行している「マンションすまい・る債」について、令和5年度募集分から利率上乗せ制度を創設することが決定。
<参考資料> 住宅金融支援機構「令和4年度制度改正等の概要」抜粋
============
============
ただ、冒頭の記事でも述べられているとおり、今年スタートした2つの制度が今後順調に普及するかどうかは、管理組合にとってのベネフィットをいかに拡充して訴求することができるかにかかってくると思います。
<参考記事>
Copyright © ilodolist All rights reserved.