違和感しかない・・・マンション管理会社「社員の対応力」ランキング

7月7日付けのダイヤモンド・オンラインに、「マンション管理会社「社員の対応力」ランキング」と題した記事が掲載されていました。

 

diamond.jp

本記事の要約は以下のとおりです。

■ 安心できるマンション管理会社とは、どのような会社か。既存の管理会社のランキングは、戸数や売上高など「規模」だけで評価がされているが、それでいいのだろうか?

■ マンション管理に対する国と業界の新たな認定・評価制度ができたこともあり、「管理でマンションを選ぶ」傾向は強まっている。

■ 管理会社の良しあしは、管理戸数の多さやブランドイメージなどより「人が重要」だといわれる。どれだけ有名でも、現場担当者がマンションに来ない、対応が遅い、知識がないなど頼りにならなければ全く意味がないからだ。

■ そこで「社員のパワー」を測るべく、管理会社の人材に関わるデータを基に二つの指標を作成、その合計点数(50点満点)で独自にランキングした。

■ 本業の実力を比較できるよう、大手でもマンション管理事業売上比率が全体の50%を切っている場合は除外するとともに、受託戸数が2000戸以上の会社を対象とした。そのため、東急コミュニティーと日本ハウズイングは、対象外となっている。

重視したのは、“面倒見の良さ”。1人の従業員当たり何戸を担当しているか、必須の国家資格である管理業務主任者を持つ人がどのくらいの組合、戸数を担当しているか、という点から評価した。1人が担当する数が少ないほど、フォローが手厚くなる、“面倒見の良い”体制が敷かれていることになる。

■ また、組合側に立ってコンサルティングを行う国家資格のマンション管理士をどれだけ取得しているかの割合を見て、付加的資格の取得への熱心さを測った。

■ 1位は、「JR西日本住宅サービス」。受託組合数93、従業員数は66人という規模の小さい会社。ただ、現場のフロントマンが担当する組合は1人当たり5~6組合、一番多い人でも8組合と少ない。

■ 2位の「阪急阪神ハウジングサポート」は受託組合数365、管理戸数3万3538、従業員数864人の中堅企業。現在、フロントマンは46人おり、1人当たりおおよそ9組合を担当しているという。採用の際に経験を重視しているため、管理業務主任者、マンション管理士の両方の資格を保有している人の割合が必然的に高くなっている。

■ 大手企業の規模の力や組織力が管理組合にとってメリットをもたらすことも多いだろうが、こうしたランキングから、対応力のある人材に当たる確率が高い中堅企業も選択肢に加えることで「管理会社の良しあしは、結局は担当者」という重要なポイントを満たす管理会社を見つけやすくなるのも確かだろう。

 

【ランキング作成方法】
(1)マンション管理業協会のホームページ掲載データから、「マンション管理事業の比率が全社売り上げの50%以上である企業」を抽出

(2)上記(1)のうち、「管理戸数が2000戸以上」の企業113社を対象に、以下の方法で50点満点(下記AとBの合計)で評価した上でランキングを作成。

 

A :「面倒見の良さ」<計30点>
1人の社員に、幾つの管理組合または戸数を担当させているかを以下のデータで確認。
1)従業員当たり戸数:総合管理戸数÷マンション管理部門従業員数 6点満点
最も少ない企業を6点、最も多い企業を0点として、それ以外は案分で配点。
案分配点計算式は (当該値-最低値)÷(最高値-最低値)×満点得点 (以下同)
2)管理業務主任者1人当たり組合数:総合管理組合数÷管理業務主任者数 12点満点
管理組合対応の窓口となるために必要な管理業務主任者が、1人で何組合を担当しているか。最も少ない企業を12点、最も多い企業を0点として、それ以外は案分で配点。
3)管理業務主任者1人当たり戸数:総合管理戸数÷管理業務主任者数 12点満点
管理業務主任者が、1人で何戸を見ているか。最も少ない企業を12点、最も多い企業を0点として、それ以外は案分で配点。
B :フロントマン有資格率 計20点
マンション管理士数÷管理業務主任者数×100
管理業務主任者と、マンション管理士。管理会社のフロントマンの業務を行うためには必須資格である管理業務主任者の取得数に対して、逆に組合側の立場から付加的に違う角度でのサービスを提供することが目的のマンション管理士をどれだけ取得しているか。比率が高い方がより付加的資格の取得に熱心な会社と評価した。
最も数値が高い企業を20点、最も数値が低い企業を0点としてそれ以外は案分で配点した。

この記事を読んでみて、

また実際のランキングを見て読者はどう感じるのでしょうか?

 

トップ2が、「JR西日本住宅サービス」と「阪急阪神ハウジングサポート」!!

 

これって全国版のランキングですよね??

てっきり関西エリア限定版かと思いました。

 

ランキングの作成方法については、違和感しかありません。

ツッコミどころ満載です。

(1)管理事業の売上比率が50%以下は選定対象から除外

「社員の対応力」と一体何の関係があるのでしょうか?

 

(2)フロントマンの有資格率(マンション管理士の取得割合)

筆者の経験から断言できますが、マンション管理士の資格の有無をもって、フロント担当者が優秀かを判断することは困難でしょう。

 

(3)従業員一人当たり住戸数、管理業務主任者1人当たり組合数、住戸数

フロント担当者の業務負荷を測るデータの一つにはなるかもしれませんが、これも対応が手厚いかどうかを判断しうるのに十分なデータとは言い難いです。

 

受託先マンションの特性(1棟あたりの平均規模、投資用か居住用かなど)や理事会の開催頻度(毎月開催もあれば、ほぼ開催しない場合もある)によってその負担はかなり変わってきます。

 

本記事にも記載されているとおり、

どれだけ有名でも、現場担当者がマンションに来ない、対応が遅い、知識がないなど頼りにならなければ全く意味がない

という指摘はまさにごもっともです。

 

であるなら、表面的なデータだけでは知り得ない「社員の質」を泥臭く調査する必要があるのではないでしょうか。

 

率直に言って、大手企業に所属していても管理士や主任者の資格を持っていても「使えないフロント担当者」は大勢います。

 

たとえば、以下のような「ダメなフロントマンあるある事例」です。

・理事会や総会の議事録案の作成が遅いうえ、内容が分かりにくい
・管理会社の担当者に依頼した事項について、いつまで経っても回答がない
・設備点検で不具合が見つかったのに、修繕工事の提案等がなされない
・駐車場の空きが増えて収入が減少しているが、何の対策も提示されない

 

ちなみに、およそ2年前にもこのような管理会社ランキングで異論を申し立てた記事を書いたのを思い出しました。

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

こちらは週刊東洋経済に関する特集記事でしたが、参考にお読みいただければ幸いです。

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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