マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
8月29日付けで、国交省が標準管理規約を改正することを発表しましたね。
改正の趣旨を要約しますと、次のようになります。
- いわゆる民泊新法(住宅宿泊事業法)が6月に国会で成立し、今後1年以内に施行される予定となったため、分譲マンション内でも合法的に民泊利用ができる状況になる。
- これに伴い、分譲マンションにおける民泊をめぐるトラブルを防止するために、あらかじめ管理組合において区分所有者間で十分議論したうえで、民泊利用を許容するか否かを管理規約上明確化しておくことが望ましい。
- そのため、マンション管理規約のひな型である「マンション標準管理規約」を改正し、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を示すこととした。
- 主な改正内容は2点。
- 専有部分の用途を定める第12条を改正し、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定を記載。
- 住宅宿泊事業者(「ホスト」となる区分所有者)が同じマンション内に居住する、いわゆる家主居住型のみ可能とする場合等の規定例も記載。
つまり、
を理由として、国(政府)が民泊利用の可否を管理規約に明記することを管理組合に正式に推奨することにしたのだと思われます。
ただ、管理規約の改正については、組合総会の特別決議(組合員総数・議決権総数全体の各4分の3以上の賛成が必要)を経る必要があるためハードルが高いという実情があります。
また、そもそも無関心層が多い事情から、今回の改正を管理組合の役員たちがタイムリーに認識できるのか、管理会社から規約改正の提案がなされるかといったプリミティブな問題も含んでいると思います。
<参考記事>
今回の規約改正に際して事前に実施されたパブリック・コメント(国民からの意見)も公開されていますが、そこでは下記のように私と同様の懸念を抱く意見も見られます。
管理組合によっては、住宅宿泊事業法の施行に管理規約の改正が間に合わないケースが発生することが想定される。
その場合に、法令施行後すぐに住宅宿泊事業の届出がなされてしまうと、当該マンションでは、住宅宿泊事業が行えることが既成事実となってしまう可能性がある。
そのため、法令施行に管理規約の改正が間に合わない場合の対応や考え方について明らかにしてほしい。
これに対する国交省の回答として、以下のコメントが記載されています。
管理規約の改正までには一定の期間を要することから、管理規約上に民泊を禁止するか否かが明確に規定されていなくても、管理組合の総会・理事会決議を含め、管理組合として民泊を禁止する方針が決定されていないことについて届出の際、確認する予定としております。
規約の改正のハードルが高いことや総会決議までにそれなりの期間を要することを考慮して、組合総会(通常の過半数決議)や理事会決議でも民泊禁止の決定があればそれを認める意向だと解釈できます。
しかし、今回の改正は民泊の禁止だけでなく容認する場合の両論併記型を基本にしているわけですから、例えば(少数の区分所有者で構成されることが一般的な)理事会決議だけで民泊を禁じることを容認するとなると、民泊の利用を容認して欲しい側からすると著しく公平性を欠く措置のように思えます。
もっとも、民泊新法施行直後の暫定的な措置としてなら、アリかなと思いますが……。
なお、改正標準規約の補足コメントには、以下の規定例も記載されています。
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。
ポイントは、使用細則の改正は普通決議で可能なため、規約改正に比べてハードルがかなり下がるということだろうと思います。
ただし、上記の条項を規約に盛り込むには、やはり現在の管理規約を改正することが必要だとすると、結局当初の難易度は変わらないのではないでしょうか。(民泊利用の可否を再度見直す際には、ハードルが下がるのは確かですが……)
また、今回は民泊への対応だけが改正の対象とされましたが、昨今はシェアハウスやウィークリーマンションといった新業態が登場したために「専ら住宅条項」ではこれらの利用を排除できないリスクが高まっています。
できれば、国交省にはこうした部分の手当ても含んだ規定案も示してもらいたかったと思います。
いずれにしても、現時点で民泊利用に対する規約の改正がなされていない管理組合さんは、ぜひ理事会などで議論してみてることをお勧めします。
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