マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
8月24日、NHK総合の「みみより!くらし解説」で「進むか マンション再生」と題して、区分所有法の改正に関する最新情報について解説がなされていました。
国土交通省によると、2021年末時点において築40年以上のマンションは約116万戸(既存ストックの約17%)あります。
今後の見通しでは、20年後(2041年)には築40年以上のマンションが約4倍の425万戸にまで増加するものと見込まれ、今後更新を図るニーズが高いマンションが急増するとされています。
こうした老朽マンションの増加や、居住者の高齢化等をふまえたマンション管理の円滑化及び再生の円滑化を図ること、また大規模な災害で被害を受けたマンションの再生の円滑化を図ることを目的として、2022年9月、法制審議会において法務大臣から区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)の見直しについて諮問がなされ、区分所有法制部会(部会長 佐久間毅氏)が設置されました。
その後、本部会にて、今年の6月に「区分所有法制の改正に関する中間試案」が取りまとめられ、今後さらに検討を深めて成案を得るべく、法務省にてパブリックコメントを募集しました。(意見募集期間:2023年7月3日~9月3日)
<法務省民事局作成資料 【区分所有法制の見直し】より>
上記のうち、今回は「区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」について改正試案のポイントをご紹介します。
(なお、中間試案の内容がそのまま法律になるかどうかは未定です。今後パブリックコメントの募集→ 法制審議会でのさらなる審議→ 法案化→ 国会での議決 というプロセスを経てはじめて法改正となります。)
(1)「集会決議要件」に関する改正案
組合総会に出席せず、委任状も議決権行使書も提出しない区分所有者は、絶対多数決を要する特別決議や建替え決議においては反対者と同様に扱われるため、決議に必要な賛成を得ることができず、マンションの円滑な管理が阻害されるリスクがあります。
そのため、所在等不明者を含めて、総会議案に対して一切意思を示さない区分所有者をあらかじめ除外し、出席した区分所有者及びその議決権の多数決による決議を可能とする仕組みを設ける改正案を提示しています。
(2)「共用部分の変更」に関する改正案
現行法では、共用部分の変更は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による総会決議で決することとされており、区分所有者の定数(頭数要件)だけは、管理規約においてその過半数まで減ずることができるものの、議決権にかかる決議要件については規約で緩和することを認めていません。
ただ、議決権総数の各4分の3以上の賛成を得ることは必ずしも容易ではないため、必要な工事を実施することができなかったり、合意形成に長期間を要するケースも生じています。
そこで試案では、共用部分の変更決議の要件の緩和に関し、以下の通り複数の案を提示しています。
<1> 法定の多数決割合の緩和
<A案>
・基本的な多数決割合を【3分の2以上】に緩和。
・共用部分の変更を促進すべき一定の客観的事由があると認められる場合、その割合を更に【過半数】に緩和する。
<B案>
・原則としての多数決割合は現行規定【4分の3以上】を維持。
・共用部分の変更を促進すべき一定の客観的要件が満たされている場合は、特則として多数決割合を【3分の2以上】もしくは【過半数】に引き下げる。
<C案>
・多数決割合については現行規定の【4分の3以上】を維持しつつ、出席者の多数決による決議を可能とする
<2> 規約による多数決割合の緩和
現行法では、共用部分の変更決議の要件のうち区分所有者の定数(頭数要件)については、規約でその過半数まで減ずることができるものの、議決権の要件は規約による緩和も認められていないことから、議決権要件についても規約で議決権の過半数まで低減させる。
いかがでしょうか?
現行の区分所有法は、総会の議決要件等が厳格な一方、無関心なために管理組合の意思決定に一切参加しない区分所有者に対する私権の制限が甘い印象があります。
そのため、特に共用部分の変更など絶対多数を求められる特別決議に必要な賛成票が集まらず、残念ながら適正な管理に支障が生じていることも事実です。
日々現場で従事している筆者としては、今回の中間試案の方向性について概ね賛成します。
なお、今回紹介できなかった項目に関する改正案を含む詳細な解説については、下記の執筆記事をご参照ください。
<参考記事>
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