マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
11月28日付けで、日管連とLIFULLが業務提携したとの記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ 株式会社LIFULL(東京都千代田区)と一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連)は、令和2年春以降を目途に不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」に掲載される中古物件情報において、マンションの共用部についてマンション管理士が検査した「マンション管理適正化診断サービス」の結果を表示することについて合意した。
■ 分譲マンションにおいては、従来より「管理を買え」と言われながら、現在においても不動産評価として管理状況の重要性を反映させることができていなかった。
■ 昨今、マンション管理業協会や国交省において、管理の適正評価を討議する場が多く設けられ、業界を挙げて管理の重要性を不動産評価に組み込む動きが出てきている。
■ 平成27年より運用を開始した、日管連の「マンション管理適正化診断サービス」診断実績が蓄積され、年内には診断棟数が1万棟を超えると予想される。
■ こうした実績に基づき、両者はマンションの管理を評価に加味するとともに、売買時の参考情報とすることを目的として、管理組合に了解を得て当該診断における「S評価」及び「A評価」を中古マンション物件情報に表示することを協議してきた。
■ 「LIFULL HOME’S」における診断結果の表示について
対象マンションの管理組合の事前了解をのもと、管理状況の良い「S評価」、「A評価」の物件で、不動産会社が「LIFULL HOME’S」に専有部分の売買情報を掲載する際に共用部の情報を併せて掲載する。
■ 診断結果が物件情報に掲載されることによって想定される効果
(1)管理状況の良い物件の売主にとって売り易くなる。
(2)購入予定者は安心して物件を購入できる。
(3)管理状況が良好な物件のみ掲載するため、これまで管理組合が取り組んできた成果をアピールできる。
(4)診断結果情報の掲載に伴い、管理組合全体の意識の向上が図られ、適正な管理が実施を促す。
(5)取引の安全を確保し、中古物件の適正な流通に資することができ、マンションの適正な管理の向上を図ることができる。
仲介業者の広告を見る限り、 現状の中古マンション価格は概ね以下の5つの項目でほぼ決まっていると言えます。
・周辺相場
・建物の築年数
・最寄駅とそこからの距離(徒歩時間)
・階数と日照条件
・専有面積
つまり、物件の固有情報というか、原則として努力しても変えようのない部分で資産価値が決まっているのが実情です。
言い換えると、
以下のような共用部分を含めてマンションのハードウェア・ソフトウェア双方のチェックについては、おざなりにされてきたと言えます。
・管理費や修繕積立金の水準がどうか?
・これまでの大規模修繕の実施状況と資金計画の見通しはどうか?
・マンション全体の管理費等の滞納状況はどうか?
・清掃や設備点検など管理業務は確実に実施されているか?
・理事会や総会など組合運営は適正か?
築10年前後の段階では、これらの評価についてまだ大きな差は生じません。
しかし、築20年前後を過ぎると、これまで適正な運営管理のために努力してきたマンションとそうでないマンションとの間に大きなギャップが出てきます。
中古マンション購入のうえで注意すべきリスク案件を挙げると、具体的には以下のような事例があります。
・修繕積立金が新築時の金額のまま改定されていない。
・築15年を超えたのに、大規模修繕工事が実施されていない。
・管理費の長期滞納が複数発生したまま法的な措置を取っていない。
・排水管洗浄など専有部の立入りが必要な作業が長期未実施の住戸が多い。
・理事会の役員が長期にわたって同一人物だけで運営されている。
・総会の出席者が全体の2割以下。
日管連の「マンション管理適正化診断サービス」では、マンション保険の引受条件の見積もりにも活用されていることから、こうしたリスクの有無も診断対象に含まれており、また定量的な評価として結果が表示されます。
マンション管理士として、これまで数多くの診断をしてきた経験から申し上げると、築20年以上で「S」評価を得るのはかなり困難で、良くても「A」評価がもっぱらです。
一方、最低評価にあたる「B」ランクと判定されたマンションは、やはり上で述べた状況を含めて「問題あり」の物件だと言えます。
マンション共用部の管理・修繕や財政状況の良し悪しが、診断結果を通じて中古物件の価格に反映されるとなれば、管理組合の運営に対しても「無関心」や「丸投げ」というわけにはいかなくなり、チェックしなければという意識が高まることはたしかに期待できるでしょう。
ただ、こうした動きをより促進するには、「LIFULL HOME’S」のような一部の仲介業者だけでなく、旧財閥系を含む大手仲介業者にも本診断結果の掲載が広げていくことが不可欠です。
しかし、彼らの親会社である大手マンションデベロッパーは好ましい動きと考えていないと思われ、なかなか容易ではないでしょう。
今後の業界動向に注目していきたいと思います。
<参考記事>
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