インフレのご時世でも、マンション管理委託費が3割削減できるワケ

先日、今年初めからコンサルティングしている都内のマンション(築25年・70戸)で臨時総会が開催され、管理委託契約の変更の議案が賛成多数で承認されました。

 

これによって、従前の年間管理委託費(約1,143万円)に対し、約3割(340万円/年)の削減ができることになりました。

 

昨秋、当社がこのマンションの管理委託費の適正水準を査定したところでは、現行の管理仕様を維持する場合は、せいぜい現状比約1割強の減額しかできないと説明していました。

ただし、このマンションの場合、管理仕様に一部過剰と思われる部分があったため、別途「仕様変更案」も提案し、その場合は現状比で3割程度の削減も可能としていました。

 

この管理組合の長期修繕計画を確認したところ、今後見込まれる30年間の修繕費用(約6億円)に対して約3割(1.8億円)もの資金不足が生じる見通しとなっていました。

 

というのも、長期修繕計画で求められる30年分の修繕費用を専有面積(㎡)あたりの単価で月額換算すると@314円なのに対し、

現状の修繕積立金の月額徴収単価が@140円しかないからです。

 

これに管理組合の繰越剰余金残高を30年間で割り戻した場合の単価(@84円)を加味しても@91円足りない計算です。(下図参照)

 

 

上記不足分をすべて修繕積立金の均等方式で徴収で調達しようとすると、現状に比べて65%も増額が必要な計算になります。

 

こうした事情もあり、管理組合としてはなるべく修繕積立金の増額幅を抑えるべくめ、仕様変更案も視野に入れて検討を進めることになったのです。

 

今回の管理委託契約における仕様変更のポイントは3つありました。

 

(1)日常清掃員の派遣中止

このマンションでは、管理員が週6日勤務し、土曜日を除く週5日は朝から夕方まで勤務しています。

 

一方、日常清掃員を別に1名派遣しており、週5日(3h/日)勤務しています。

管理員も清掃していますが、週1日のみにとどまっていました。

 

管理員の1日の勤務時間が長いことから、日常清掃を完全兼務することも可能と判断し、清掃員の派遣を止めることを提案しました。

 

(2)エレベーター保守点検の委託先変更

従前は管理会社経由でメーカーに保守を委託していましたが、現状の点検結果で経年劣化や不具合等の指摘事項がなかったため、独立系保守業者にフルメンテナンス契約のまま切り替えることができました。

 

(3)機械式駐車場点検、設備点検の頻度の変更

機械式駐車場(ピット昇降式3段)については、従前「年6回」実施しているところ、標準的な頻度である「年4回」に変更しました。

 

設備点検については、建物共用部全体のほか、各付属設備(電灯設備、植栽、外構、ゴミ置き場、排水溝など)を対象に「年4回」実施していましたが、やや頻度が多いため「年2回」に変更しました。

 

現状の管理状況が非常に良いため、日常清掃員の派遣廃止については品質の低下を懸念する声も挙がりました。

 

これを受けて、理事会としては仕様変更後の状況につき今後居住者の意見も聞きながら、再度仕様を見直す余地があることを伝えて、納得いただくことができました。

 

今回の管理委託費の削減効果で、資金不足の6割程度はカバーできる見通しとなったので、残りは修繕積立金の増額改定で対応することになりそうです。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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