マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
管理会社の業務状況に疑問を感じた管理組合の理事さんから、当社宛にメールで相談を受けました。
その役員さんが日常懸念を感じている管理会社に対する懸念や不満の内容は、概ね以下の通りでした。
■ 修繕工事の発注先選定のため相見積もりの取得を管理会社に依頼しているが、いつも特定の業者1社からの提示しかない。
■ 昨年の組合総会で上記業者によるポンプ交換工事の予算が計上されているが、見積書などの資料がない。
■ 管理会社担当者に対して理事から質問や相見積もりを依頼してもスルーされる。
そこで、管理会社が日常業務をどのように行っているか状況を把握するため、「マンション管理適正化診断サービス」(無料)を受診されることをお勧めし、理事長さんからも了承が得られたため実施することになりました。
その後、理事さんの立会いのもと、マンションの管理室で診断を実施したものの、まず重要資料の保管状態がかなり酷いために診断そのものが実施できないことがわかりました。
このマンションでは、約10年前に今の管理会社に変更された経緯があるのですが、管理室内にある資料のほとんどが以前の大手管理会社の時代のものでした。
少なくとも以下に掲げる重要資料が管理室には保管されていません。
・過去5年以内に開催した総会議案書と議事録
・各種設備点検報告書(消防設備、建築設備定期検査など法定点検を含む)
・大規模修繕工事の完了報告書ならびに保証書
・管理委託契約書
・長期修繕計画書(更新後のもの)
そのため、理事長さんを通じて管理会社に資料を送付するよう要請してもらったところ、管理会社の担当者から理事長さん宛に驚くべき内容のメールが送られてきました。
先日の依頼のあった書類についてですが、理事会決定として承認されていません。
管理会社として勝手に提出することは出来ません。
マンションの大切な資料を見ず知らずのひとにマンションの情報を提供することは管理委託契約に反しますのでご理解下さい、まず次回の理事会で決議承認して下さい。
甚だしい問題のすり替えに呆れてしまいますね。
管理受託会社として、顧客の重要資料の保管・整理を行わずに長年放置していたことを全く「棚上げ」にしたばかりでなく、自身が知らぬ間に組合が適正化診断を依頼したことをあたかも契約違反であるかのように主張して理事長を牽制しています。
国交省の「標準管理規約」には以下のような定め(抜粋)があります。
第49条 (議事録の作成、保管等)
4 理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。
第64条 (帳票類の作成、保管)
理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。
このマンションでは 「総会議事録は管理事務室に保管している」旨を掲示しているにもかかわらず保管されていませんし、会計帳簿等も直近ものはまったく見当たりませんでした。
このような状況を招いた原因として、
まず管理組合自身が管理会社の業務を主体的にモニタリングしていなかったことは確かです。
しかし、事務管理を含めて全部委託されている管理会社にも、規約に反する状態を放置している責任を真摯に感じてもらわねばなりません。
まして、現状に関する反省や謝罪もなく、組合が外部の専門家に診断を依頼したことに「逆ギレ」するのは言語道断です。
このマンションの将来は、今から管理組合自身がリスクに目覚めていかに行動し、組合全体の意識を改革できるかにかかっています。
<参考記事>
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