マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
3月10日付けの住宅新報WEBに、「マンション関連2法改正案が国会へ 適正管理に恩恵、促進図る」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ 政府は2月28日、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定し、同日に国会へ提出した。
■ 国による「管理基本方針」をはじめ、管理組合による「管理計画」の認定制度、団地における敷地分割制度などの創設が柱。成立すれば公布から2年後に全面施行される。
■ 管理では、国がマンション管理についての基本的な方針を策定。現行の「マンション管理適正化指針」は、国の基本方針に組み込まれる形となる。
■ 施策の主体は、基本的にはマンションの割合や数の多い都区部と市単位を想定し、町村については県が役割を担う見込み。各自治体は国の基本方針を踏まえ、区域内の「マンション管理適正化推進計画」を作成できる。ただし、 マンションの状況は自治体によって差があるため、あくまでも任意の計画となる。
■ 自治体は、「積立金が不足」「総会が適法に開かれていない」などの状況を把握しながら、「管理組合に対して助言や指導、勧告を行える。ただし、罰則規定はない。
■ また、個々のマンションの「管理計画」制度も創設する。所定の基準に適合していれば行政の認定を受けられるため、管理状況の可視化と市場での優位性につながり、住民による適正管理のモチベーション向上が期待される。計画認定のインセンティブとして、国交省は税制による優遇も検討しているようだ。
■ 管理組合と管理業者の負担軽減を図るため、管理受託契約における重要事項説明書と契約時の書面についてはデジタル交付を認め、重説自体もIT活用が可能となる見込み。
■ 同一内容での契約更新時の重説については、組合側が説明不要と表明すれば、書面の交付のみで可とする。
■ マンション再生についても、新たな施策を盛り込んだ。現行の敷地売却制度を拡充し、対象の追加に加えて敷地分割も行いやすくする。
■ 具体的には、「防火性についての建築基準法等不適合」と「外壁の剝落等による周辺危害のおそれ」を「特定要除却認定」として新たに追加する。またバリアフリー性能が確保されていない建物や、給排水管などの著しい劣化なども「要除却認定」として加えた。
■ 現在は民法の原則により全員の賛成が必要となるため、敷地分割は極めて困難な状況にある。そのため、「特定要除却認定」の団地型マンション等の再生へ向け、所有者等の5分の4以上の同意により敷地を分割・売却できるようにする。
本記事によれば、
管理計画の認定制度は2022年から正式にスタートする予定です。
具体的な仕組みとしては、
国が定めた「基本方針」(現状の国交省が定めたマンション管理適正化方針を踏襲するにすぎない)にもとづき、各自治体が区域内の管理適正化推進のための計画を作成します。
そのため、自治体の裁量によって濃淡が出るというか、指導の厳しさもかなり差が生じることになることが予想されます。
本制度の運営で注目されるのは、個々の管理組合に提出を求める「管理計画」の作成の内容とその手間がどれくらいかということでしょう。
管理組合は委託先の管理会社に「丸投げ」したいと考えるし、頼まれる管理会社はなるべく手間をかけたくないというのが本音でしょう。(自主管理タイプの管理組合は自ら作成しなくてはならないので大変です)
一方、全国で最もマンションの多い東京都では、本制度に先行する形で、今年1月「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」が制定されました。
この条例は、以下の3つの柱で構成されています。
1.都や管理組合、事業者等の責務の明確化
2.管理組合による管理状況の届出(管理状況届出制度)
3.管理状況に応じた助言・支援等の実施
都の「管理状況届出制度」の概要をまとめると以下のようになります。
● 要届出マンション
1983年12月31日以前に新築されたマンションのうち、人の居住の用に供する独立部分の数が6以上であるもの
上記以外でも、管理不全の兆候があると思われると判断した場合は、その限りでない。
● 届出事項
・管理組合の運営体制の整備
・管理規約の設定
・総会の開催
・管理費及び修繕積立金の額の設定
・修繕の計画的な実施
● 届出方法
以下の2つの方法から選択できる。
1)管理状況届出システムへの入力(推奨)
2)マンション所在の区市町村への届出書の提出
● 届出の更新・変更5年ごとに届出内容の更新が必要。
(届出内容に変更が生じた際に、変更の届出が必要)● その他
届出を行ったマンションや、正当な理由なく届出がないマンションの管理組合や区分所有者等に対し、管理組合又は区分所有者等の協力を得て、当該マンションに立ち入り、書類その他の物件を調査することができる。
つまり、都内にある今年で築37年以上になるマンションは、ほぼすべてが届け出が義務付けられ、5年ごとに更新の届け出も必要になります。
ただ、届け出の内容を見る限り、普通に運営されている管理組合にとってはほとんど負担とはならないでしょう。
都の狙いは、本制度の施行によって管理不全のマンションをあぶり出し、是正させるための指導を実施したいということだと思います。
ただ、互いに似通っている国の「管理計画認定制度」と都の条例による「管理状況届出制度」が、管理組合にとって二重の負担にならないように配慮してもらいたいです。
<参考記事>
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