マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
1月21日付けのビジネスジャーナルに、「マンションの電力が危ない!高圧一括受電だと電力自由化も利用できず…電力停止のおそれも」と題する記事が掲載されています。
この記事によると、
◆高圧一括受電を導入したマンションの住民は、4月以降の電力自由化を利用できない。
◆しかし、マンションへの高圧一括受電導入に際し、事業者から住民に対して電力自由化に関する説明が一切なく、契約期間中は電力自由化を利用できないなども説明されていなかった。そのために、住民からの不満が高まり苦情が殺到する事態になっている。
◆一方、電力自由化の進展によってマンションへの高圧一括受電導入がストップし、事業者の経営が困難になり倒産が続出するのではないかという懸念がある。
◆高圧一括受電業者には、経営体力が脆弱な会社もある。もし倒産すれば、真っ先に直面するのがマンションに設置された変圧器の差押えである。
◆マンション住民にとって変圧器を差し押さえられた場合は、電力停止で生活に支障が出る可能性がある。また、差し押さえられた変圧器を買い戻すにも、管理組合にその資金がなければ住民の追加負担になる。
この記事に対して3つの点から反論したいと思います。
1)高圧一括受電導入こそ、電力自由化の賜物である
そもそも、マンション全体で一括受電できるようになったのは、2005年の電気事業法の規制緩和によるもの、つまり2000年以降に始まった電力自由化政策の一環なのです。
大口利用者の条件となる受電量が2004年まで「500kw以上」だったのが、その10分1の「50kw以上」にまで下がったため、一般の分譲マンションでも高圧一括受電が可能になったわけです。
その結果、今現在すでにわが国の使用電力量全体の6割は自由化されています。
今年4月からの電力小売りの自由化は、この一連の自由化政策の「仕上げ」段階のものであり、これまでずっと規制されてきた小口の家庭部門を対象としたものなのです。
したがって、「高圧一括受電を導入すると、電力の自由化の恩恵が受けられない」という表現は明らかに矛盾していることが分かるでしょう。
2)高圧一括受電でも、小売り自由化の恩恵は受けられる
高圧一括受電導入の方法としては、管理組合自らが変圧器を所有して実施する方法もあり、実はそちらのスキームの方が一括受電業者を介するよりも多く経済的メリットを享受できるのですが、管理組合自身にその知識が乏しいのでほとんど普及していないのが実情です。
このスキームで組合が自力で一括受電できた場合は、4月以降の小売り自由化後、地域電力会社以外からも高圧の電力をより有利な条件で購入できるチャンスがあります。
この点でも、「高圧一括受電を導入すると、電力の自由化の恩恵が受けられない」という表現は、誤解を生みやすいと言わざるを得ません。
3)高圧一括受電業者が倒産するリスクは本当に高いのか?
一括受電業者のビジネスモデルとは、管理組合に変わって変圧器の投資を行う一方、高圧(大口)と低圧(小口)の料金価格差で得られる「差益」と、各住戸の電気料金の請求管理サービスという「付帯収益」の両方で長期間にわたって稼ぐ、というものです。
もちろん、受託の条件として電気料金の「差益」部分を管理組合に一部還元するものの、小売り自由化後は、一括受電業者も地域電力会社以外から電力を仕入れることで自らのマージンを増やせる可能性があります。
また、一括受電業者も大手デベロッパーの資本を受け入れたり、もともと大手企業のグループに属しているケースが多いので、少なくとも本記事のように、或る日突然倒産→差押えという事態に陥ることはちょっと考えにくいように思います。
しかしながら、理由はともかく管理組合として変電設備を買い取れるチャンスがあるなら、上述のとおりもともと電気料金の差益で十分回収が見込める事業なので、買い取ってもいいと考えます。(※よほど資金難の組合でなければですが…。)
ただ、本記事の指摘にあるとおり、一括受電業者による新規物件の獲得は今後容易ではないかもしれません。
管理組合に対して、現状のように「共用部の電気料金の25%〜50%程度の削減」しか利益を還元できないとすると、専有部分に置き換えた場合は「5%〜10%の電気料金削減」にしかなりません。
この程度のメリットなら、ガスや携帯電話などのセット販売で各住民が契約した方がむしろ管理組合による縛りもなくて良い、という判断はあり得えます。
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