マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
先日、顧問先の都内のマンション(約100戸)で第15期定期総会が開催されましたが、これまでの当社の貢献が評価され、顧問契約も無事更新いただきました。
当社がコンサルティングに着手したのは2年前のことですが、その前と後でどれだけ状況が変わったかをご紹介します。
(1)管理会社の変更
当社の「管理コスト適正化診断」では、管理仕様を変更しなくとも現状比14%下げられるという見立てでした。
そのため、管理会社と委託費の交渉を行いましたが、2回の交渉を経ても減額率は5%に満たない提示にとどまりました。
当時の理事長さんとともに旧財閥系デベの管理会社に赴いて上席の部長にも掛け合いましたが、結局埒が開きませんでした。
当初は理事会にリプレイスの意思はなかったのですが、協議した結果、同業他社から相見積もりを取得することを決め、各社プレゼンの結果、従前と同じ仕様のまま他社に契約を切り替えることになりました。
その結果、管理委託費は当社の査定額とおおむね同じ水準まで下がり、年間200万円の剰余金が生まれることになりました。
(2)遠隔監視業務費の適正化
このマンションでは、竣工当初から警備会社のインターホンが設置されていましたが、経年劣化に伴い警備会社から設備更新の提案を受けました。
しかしながら、インターホンが特定の警備会社の仕様になっていたため、警備会社を変更することが難しく、監視業務費も下げられない状況でした。
そのため、インターホンの更新タイミングを機に遠隔監視業務費の見直しを行うこととしました。
具体的には、警備会社を他社に変更できる余地を作るよう、まずインターホンを国産メーカーから直接見積もりを取ることにしました。
それとともに、同業他社から遠隔監視業務費の見積もりを取りました。
こうした動きに危機感を覚えた警備会社が、インターホンの更新工事費、遠隔監視業務費ともに大幅に減額する提案を行ってきました。
その結果、最終的には遠隔監視業務費が従前の半額以下になり、年額75万円の剰余金が新たに生まれました。
(3)管理仕様の見直し
このマンションでは、管理仕様がやや手厚すぎる項目が見られました。
特に管理員業務は毎日8時間勤務となっているうえに、清掃員は別にスタッフが2名派遣されていました。
そのため、以下の項目について勤務日数・時間の変更に関するアンケートを実施した結果、7日勤務は維持したまま1日の勤務時間を2時間カットすることになりました。
その他、自動ドアや自家用電気工作物の点検頻度を若干減らす変更を加えた結果、年額86万円の剰余金が生まれました。
こうした3つの見直しを行った成果として、年額360万円の経済効果を実現することができました。
このマンションの修繕積立金は、専有面積(㎡)あたり月額120円でした。
しかしながら、このマンションのために作成された長期修繕計画(30年)で逆算してみると、均等積立てで必要となる徴収額は、同278円です。
<国交省のガイドラインにもとづいて試算すると、月額223円>
将来の資金不足を回避するには、管理委託費の適正化で得られる剰余金の繰入れを加味しても、現状比で@100円以上の増額が必要な状況であることがわかりました。
理事会で審議した結果、こちらも区分所有者の皆さんの生活に直結する重要テーマのため、当社のサポートのもと、現状の資金収支の見通しをお知らせするとともに、修繕積立金の増額に関するアンケートを実施することになりました。
その集計結果をもとに理事会で審議したところ、均等積立方式への移行はしなかったものの、@200円まで増額することを選択し、先日の総会で無事承認されました。
この水準まで増額しておけば、上記剰余金と合わせると実質@230円程度になるため、今後さらに2倍も値上げするような事態は避けられることとと思います。
管理組合の財政は、管理費と修繕積立金という2つの会計で運営していますが、
このマンションは2年でどちらも大きく変革することができ、当面の大きなリスクは解消されることになりました。
皆さんのマンションは大丈夫ですか?
<参考記事>
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