インフレのご時世でも、マンション管理委託費が3割削減できるワケ
2023/09/04
コンサルタントとして様々な分譲マンションを目にしてきましたが、マンションを購入する際には想定しえなかったリスクを抱えている事例も少なくありません。
今回は、共用設備に関わる経済的なリスク事例3つをご紹介しましょう。
(1)エレベーターの保守契約
エレベーターの保守契約には、フルメンテナンス(FM)契約とPOG契約があります。
両者の違いについては、過去の記事でもご紹介しているため詳細は割愛しますが、要するに、FM契約では経年劣化に伴う修繕費用も保守点検費の中に含まれています。
そのため設備リニューアルまでの間、エレベーターに関する修繕負担は一切生じません。
一方、POG契約の場合、こうした修繕費が保守費に含まれていないため、基幹部品等の交換に際して別途支出が伴います。
<参考記事>
一般的には、ワンルームなど投資向けマンションでPOG契約が選択されているケースが多いですが、エンドユーザー型のマンションでも時折見かけます。
つまり、POG契約のマンションでは、エレベーターの大規模修繕費も追加で見込む必要があるので要注意です。
厄介なのは、
新築時にPOG契約でスタートした場合、途中でFM契約に変更できないことです。
変更できる唯一のチャンスは、築25~30年で行う設備リニューアルの時だけです。
(2)警備会社のOEM供給型インターホン
集合インターホンといえば、現在国内メーカー2社による寡占状態となっていますが、マンションの中には 警備会社のOEM供給タイプが設置されている事例が見られます。
警備会社独自のメニューを備えているとは謳っていますが、それはまったく大した話ではありません。
重要なことは、
警備会社独自の仕様として設えているため、警備会社を変更しようとした場合に現状と同じ仕様を再現できないということです。
例えば、ホームセキュリティを導入しているマンションの場合、現在は住戸別に警報信号を把握できているものが、マンション単位でしか把握できなくなります。
そのため、警備会社の変更はもちろん、委託費の減額交渉すら困難というデメリットがつきまといます。
この呪縛から逃れるには、集合インターホンの更新(概ね15年ごと)のタイミングで、メーカーの一般仕様製品を購入するしかありません。
<参考記事>
(3)電気錠タイプの玄関
集合エントランスや住戸玄関で鍵を差し込まなくて済むように、シリンダーキーにノンタッチタグを付けてスムーズに出入りできるタイプの新築マンションが増えています。
<ノンタッチタグ付きシリンダーキー>
一方、一部の分譲マンションでは、カードキー、ならびに暗証番号入力用テンキーで施解錠できる、いわゆる電気錠タイプの住戸玄関を装備している事例もあります。
<テンキー型電気錠の例>
簡単に言うと、シティホテルのような鍵仕様となっているのです。
日常生活上はたいへん便利に感じる居住者が多いようですが、
こちらのリスクは「設備更新の頻度」と「その際のコスト負担」にあります。
まず、設備の耐用年数がとても短く、一般的に「7年」程度とされています。
通常のシリンダーキーなら、(使用頻度にもよりますが)通常20年以上はもつうえ、交換時にも大した費用は掛かりません。
しかし、電気錠を交換するとなると、共用部を含めて戸あたり10万円くらいの負担にものぼる事例がありました。
全戸数分の費用を管理組合で負担するとなれば、かなりの重荷になります。
いかがでしょうか?
マンションのパンフレットや広告には、当然ながら「メリット」しか書かれていません。
「美辞麗句」に惑わされないよう注意が必要です。
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