インフレのご時世でも、マンション管理委託費が3割削減できるワケ
2023/09/04
顧問先のマンション(50戸・築13年目)では、昨年春から始まったコンサルティングの結果、管理委託費の適正化やLEDの導入が実現し、今後年間約4百万円の剰余金が生じることになりました。
それに伴い、この剰余金の振替えを目的として、駐車場使用料収入のうち4割強を今後修繕積立金会計に計上する方針を理事会で決議しました。
しかしながら、この剰余金をもってしても、現状の修繕積立金の水準(月額120円/㎡)では長期修繕計画で求められている資金需要に対して大きな不足が生じることが明らかでした。
そのため、早期に修繕積立金を増額することも不可欠ということで、現状比2倍増で次回の総会に議案を上程することになりました。
さて、修繕費を除いて、管理委託費、電気料金に次ぐ大きな固定費とは何でしょうか。
それは、マンション共用部を対象とする損害保険料です。
このマンションでは、マンション管理適正化診断サービスを実施したところ、最高評価「S」が受けられたため、保険料が現状比で2割強下げられることが分かりました。
そのため、現在の契約(5年)をなるべく早く中途解約し、新たにマンションドクター火災保険に加入することをお勧めしました。
ところが、そこで思わぬ問題が出てきました。
というのも、
現在の保険代理店でもある管理会社のフロント担当者が以下のような主張をしてきたからです。
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【フロント担当者の主張】
(1) 当社が保険代理店から外れた場合、現場写真の撮影や事故報告書の作成、ならびに保険金請求の事務は行わない。
(2)管理会社が事務管理業務として行う業務は、マンション保険契約の締結や更新にかかる事務手続きに限られる。
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それによって、
理事会も「代理店の変更を行った場合、今後組合側の手間が増えるのではないか」と躊躇することになってしまったのです。
それでは、管理会社による(1)・(2)の主張を検証してみましょう。
このマンションでは、 国交省の標準管理委託契約に準拠した管理委託契約書を使用しています。
契約書に記載されている事務管理業務の説明の中で、「契約事務の処理」という項目があり、「管理組合が行うべき損害保険契約に係る事務を、組合に代わって行う」と記載されています。
たしかに具体的な事務の範囲・内容までは言及しておらず、保険金請求事務を行うのかどうか明らかではありません。
ただ、この管理会社が受託している他のマンションで、保険代理店から外れたケースも知っていますが、このような主張は一切なされませんでしたし、その後も保険金請求の事務は当たり前のようにとり行われています。
その事実も件の担当者に伝えたのですが、
「ウチの支店ではそんなことはしていない」の一点張りでした。
そのため、本件についてマンション管理会社の所管団体である「一般社団法人マンション管理業協会」の相談窓口にヒヤリングしたところ、口頭で「標準委託契約で定められた損害保険契約における事務には、保険金請求の代行業務も当然含まれます。」という回答を得ました。
さらに、
当社が独自に入手した標準管理委託契約に準拠しない契約書も確認してみました。
その結果、大手同業他社の契約書では、下記の通り損害保険の契約に関する事務手続きとして「保険金請求事由が発生した場合の請求に関する事務手続きも補助する」と明記されており、マンション管理業協会の回答内容と符合していました。
そのため、理事会の場で、この担当者に対して管理会社として保険金請求の事務を行わない方針は本当に間違いないのかを確認するよう要請しました。
後日、その担当者の上席であるマネジャーから連絡があり、本件の事情の詳細を説明したところ、保険事故に関する示談交渉は行わないが、現場写真の撮影、事故報告を含む保険金請求事務については事務管理業務の範囲で行う、という回答が得られました。
したがって、今回の管理会社の主張は、一フロント担当者の「勘違い」だったことが明らかになったわけです。
ちなみに、このベテランのフロント担当氏ですが、
管理業務主任者に加えて、マンション管理士の資格も保有しています。
いくら国家資格を持っていても、その実力のほどは・・・というわけです。
<参考記事>
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