マンション購入者は必須! 面積表示の基礎知識

マンションを購入するときには誰でも例外なく、その「面積」を確認するはずです。部屋数さえ希望どおりなら「部屋の広さは関係ない」などという人はいないでしょう。しかし、この面積表示については意外と知られていない面があるかもしれません。

 

同じ部屋に「3種類」の面積が存在する!?

マンションのそれぞれの部屋における床面積(専有面積)を表示するとき、パンフレットなどに記載される「壁心(へきしん・かべしん)面積」と、登記に用いられる「内法(うちのり)面積」があることを知っている人は多いでしょう。

壁心面積は部屋を取り囲む壁や柱の中心線をもとに測り、内法面積は壁に囲まれた内側の部分だけを測るものです。そのため、壁の厚さの半分ずつが面積に加わる壁心面積のほうが、いくぶん広い面積となります。

ところが、マンションにはもう一つ、共用部分の持分を加算した面積が存在します。これは固定資産税の課税や評価に用いられるもので、自治体によって表記方法が異なる場合もありますが「現況床面積」などの用語が使われています。

あるマンションの例を挙げると次のような床面積となっていますが、どれも同じ一つの部屋を表すものです。

【A】71.23平方メートル(壁心面積) パンフレットや広告などに使われる床面積
【B】67.50平方メートル(内法面積) 登記に使われる床面積
【C】98.75平方メートル(登記床面積に共用部分の持分を加えた面積)

このうち【C】の共用部分の持分を加えた面積では、総戸数の割に共用施設が多かったり内廊下の構造だったりすると【A】や【B】の面積との差が大きくなり、場合によっては5割以上広い面積となることもあります。

また、自治体によっては固定資産税の納税通知書や評価証明書などに【C】の床面積しか記載されていないケースもあるため、その事情を知らないと戸惑ってしまうことでしょう。

 

古いマンションでは、バルコニー面積を含んだ表示のこともある

現代では「バルコニーは共用部分である」という規定が一般の消費者にも理解されているでしょうが、以前はそのあたりの認識があいまいなケースもありました。そのため、昭和30年代から40年代頃に分譲されたマンションの当時のパンフレットをみると、バルコニー面積を加えた「総面積」が表示されていることもあります。

それをよく知らない不動産会社が近年、中古マンションの広告に誤って「総面積」を記載した事例もありますから一定の注意も欠かせません。それほど古いマンションの購入を検討するようなケースは少ないでしょうが……。

 

税制の大半では「内法面積」が基準になる

住宅ローン控除を始めとして多くの税制では、優遇措置の適用対象として「50平方メートル以上」などの要件が設けられていますが、そのほとんどは「内法面積」つまり「登記床面積」によって判断されます。

新築分譲マンションのパンフレットなどでは「壁心面積」しか分かりませんが、たとえばこれが「52平方メートル」のとき、登記床面積は50平方メートルを下回り、税制上の優遇措置が受けられないことになりかねません。

壁心面積と内法面積がどれくらい違うのかは、マンションの構造によっても異なるため明確ではありませんが、とくに50平方メートル台前半のマンションを検討するときには十分な注意が必要です。おおよその「見込み面積」がどうなのか、事前によく確認しておきましょう。

なお、新築マンションの固定資産税については5年間にわたり軽減する措置が講じられ、その要件は「50平方メートル以上280平方メートル以下」となっています。この場合の床面積は上記の【C】に該当する「共用部分の持分を加えた面積」であり、登記床面積ではありません。

 

なぜ、パンフレットには内法面積が使われないのか

税制上の適用判断基準が内法面積(登記床面積)なら、新築分譲マンションのパンフレットにも内法面積を使えばいいじゃないか、というのは多くの人が抱く疑問かもしれません。

しかし、内法面積は原則として建物が完成してから土地家屋調査士が現況調査・測量を実施したうえで決めることになっています。つまり、完成前の販売が一般的な新築分譲マンションでは内法面積が存在しないことになり、確定前の想定面積を表示することもできないのです。

それに対して壁心面積は建築基準法でも用いられる面積であり、マンションの設計図面から導き出される面積です。建設工事中の設計変更などがないかぎりこれが変わることはなく、引き渡しのときになって「実は面積が違った」という事態も起きないでしょう。

ちなみに、一戸建て住宅であれば建築基準法だけでなく、登記をする際にも壁心面積が用いられます。マンションの各階床面積(1フロア全体の面積)についても登記に使われるのは壁心面積であり、内法面積が使われるのはマンションの専有部分(それぞれの部屋)の面積を登記するときだけなのです。


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平野 雅之

平野 雅之

不動産コンサルタント会社リックスブレイン代表・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター。東京・神奈川を中心に20年以上にわたり不動産売買取引の仲介業務に従事。豊富な実務経験をもとに、現実に即した実践的なアドバイスなどを一般消費者向けに提供しています。総合情報サイトAll Aboutで「不動産売買」のガイドを務めるほか、HOME’S、Yahoo!不動産など数多くのメディアで情報を発信。不動産購入、売却などに関するセミナー講師も担当しています。

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