管理規約が古いと、理事長が当然には訴訟事件の原告になれない!?

顧問先の管理組合では、大規模修繕に起因する瑕疵にもとづいて施工会社に補修請求を行ったにもかかわらず、補修はおろか工事代金の返金も拒否されたため、訴訟を提起し、現在係争中の案件があります。

 

これに際しては、当然のことながら事前に総会を開催し、訴訟の提起ならびに代理人として弁護士を起用する旨の議案を上程し、承認を得ています。

 

そんな中、代理人の弁護士から、担当裁判官から以下のような指摘を受けたとの報告がありました。

 

■ 今回の訴訟のような第三者に対する損害賠償請求事件では、区分所有法上の「管理者」(理事長)が訴訟の当事者になるには,管理規約又は集会決議による授権が必要とされている。

■ しかしながら、当マンションの管理規約では、管理者を理事長とする旨の定めは規定されているものの,管理者を訴訟の当事者(原告)とすることまでは明確に規定されていない。

■ 判決が無効とならないよう安全策をとるべきという観点から,管理者である理事長に訴訟提起する権限を授権することを明確に決議してもらいたい。

 

つまり、こういうことです。

区分所有者の代理として訴訟の原告になるのは管理者(理事長)にとって当然の職務ではなく、あくまで「一定の条件をクリアすればなれる」としか法律では定められていないということです。

 

理事長が原告となるには、あらかじめ規約で定められているか、総会決議を得ることが必要なため(規約にその旨が明記されていない当マンションの場合は)訴訟提起のための決議の際に、理事長が訴訟事件の原告となることも併せて盛り込む必要があったというわけです。

 

 

ほとんどのマンション管理組合では、国交省の「標準管理規約」にもとづいて作成されていますが、今年で築19年目を迎える当マンションが竣工した当時の標準規約にはそこまで明確な規定がありませんでした。

 

ちなみに、

現在の標準規約には、理事長が訴訟当事者になることについて明確な定めがあります

・・・・・・

【国交省の「標準管理規約」 第67条3項】

3 区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる

一 行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること

二 敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること

・・・・・・

高経年マンションの管理組合の方は、念のため管理規約を確認されることをお勧めします!

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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