無料の「マンションライフサイクルシミュレーション」をさっそく試してみた!

集合住宅管理新聞「Amenity」に、「大規模修繕工事費と資金計画の試算ツール「マンションライフサイクルシュミレーション」をネット上で無料公開 /(独)住宅金融支援機構」と題した記事が掲載されていました。

 

www.mansion.co.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 大規模修繕工事はマンション管理組合にとって一大事業であるが、十数年単位で行われる事業のため、管理組合内でその知見が蓄積されにくい側面がある。

■ 1回目、2回目と回を重ねるごとに、必要な工事内容も変わるため、施工会社から見積もりをとっても、その内容及び費用の妥当性を管理組合が判断するのは困難なことが多い。

■ このような状況に対して、(独)住宅金融支援機構は、管理組合が大規模修繕工事の工事費等を試算できるツールを開発し、無料でネット上に公開した。
■ 同機構が開発した「マンションライフサイクルシュミレーションツール」は、2013年から2018年までの同機構が実施した「マンション共用部分リフォーム融資」1550棟分の工事費データを活用したものである。

■ 各マンションの管理規約や長期修繕計画、収支予算書等から、マンションに関する建物情報、過去の工事情報、資金情報等の基礎情報を入力することで、建物規模、築年数などに応じた各マンションの以下の試算結果が得られる。

1 平均的な大規模修繕工事費用
2 修繕積立金会計の収支計画グラフ・キャッシュフロー表

■  試算される工事項目は、直近の外壁塗装等改修工事を実施する年に必要となる総額工事費と、仮設工事から外構・附属設備までの17項目の工事費が、同規模のマンション工事費データを低い順に並べた時に、当該マンションがどこに位置するか示されている。

■ 同シュミレーションは、一般的な修繕工事を想定しているため、建物の形状が複雑、設備が豪華だったり、グレードの高い工法・材料を選択した場合などは、シュミレーションとの乖離幅が大きくなる。

■ 同シュミレーションで想定する物件規模等は、階数30階以下、平均専有面積100㎡以下、単棟型等を想定しているため、想定を超えるマンションも乖離幅が広くなる。

■ 日常的な小修繕工事や、特殊な設備工事(プールや温泉施設等)、調査・診断費用等は試算の対象外となる。

■ 同機構によれば、シュミレーション結果から、見積額とシュミレーション結果との差異の要因について、施工会社などに確認することにより、管理組合が工事内容や金額の納得性を高めることができるとしている。

本記事を読んで、さっそく支援機構のサイトページにアクセスしてみました。

 

www.jhf.go.jp

そして、実在する物件をもとにシュミレーションの精度を確認することにしました。

 

現在2回目の大規模修繕を予定している顧問先のマンションを題材に、本サイトのナビゲーションにしたがって、物件の諸元データを以下の通り登録しました。

■建物情報

・建設地: 神奈川県

・住戸数: 31戸

・新築年(西暦): 1994年

・建物階数(地上): 4階

・敷地面積: 2871m²

・延べ専有面積: 2135m²

・機械式駐車場台数: 0台

・エレベータ台数: 1台

・外壁の仕様: タイル

・廊下等方式: 片廊下型

■ 工事情報

・大規模修繕工事で実施する項目:

屋根防水改修、床防水改修、鉄部塗装等改修、建具・金物等改修、共用内部改修、給水設備改修(管更生)、排水設備改修(管更生)、電灯設備等改修、情報・通信設備改修、消防用設備改修、エレベータ設備改修(補修)、外構・附属設備等

・改修給水設備改修(管取替)の実施状況これまでに工事を実施しましたか?:

いいえ(又は不明)

・排水設備改修(管取替)の実施状況これまでに工事を実施しましたか?:

いいえ(又は不明)

・エレベーター設備改修(取替)の実施状況これまでに工事を実施しましたか?:

いいえ(又は不明)

■資金情報

・積立金徴収額: 563万円/年

・専用使用料(駐車場等)からの繰入金: 200万円/年

・現在の修繕積立金総額(残高): 5280万円

・既存の借入金: なし

 

登録を完了したところ、ほぼ瞬時に試算結果を得ることができました。

 

例えば今後30年間の資金収支計画については、以下のようなグラフが表示されます。

<凡例>

・青の棒グラフ:修繕積立金の年間収入

・赤の棒グラフ:大規模修繕工事等の支出

・赤の折れ線グラフ:繰越剰余金残高の推移

 

f:id:youdonknowwhatyoulove:20201111142210p:plain

 

f:id:youdonknowwhatyoulove:20201111143206p:plain

 

また、上記の資金収支結果から、以下のようなコメントも記載されます。

「試算期間における工事費に対し、修繕積立金が不足しています。修繕積立金増額の検討が必要です。以下の年次では資金不足となります。

・2024年(2393万円)・2025年(1844万円)・2026年(1081万円)・2027年(318万円)・2033年(1158万円)・2034年(395万円)・2057年(1954万円)・2058年(1191万円)・2059年(428万円)   」

 

ちなみに、これらのアウトプットはすべてPDFファイルでダウンロードすることができます。

 

肝心のデータの精度についても検証してみました。

 

このマンションには管理会社が2年前に作成した長期修繕計画がありますが、

30年間の修繕費の支出累計額は、税込243百万円です。

 

本シミュレーションについて同金額を確認してみたところ、

なんと税込247百万円! ほぼピタリ賞です!!

 

長計の作成費用に30万円近くも費用がかかったことを考えると

この無料シミュレーションの精度はかなり優れている・・かもしれません。

 

各項目の修繕費をざっと見たところ、それほどおかしな金額が計上されていないので、

上記の前提条件をクリアしているマンションであれば利用価値は十分あるかと思います。

 

管理組合の役員さんは、ぜひお試しあれ!

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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