マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
不動産流通研究所が発行している「不動産ニュース」で「『マンションすまい・る債』の応募は8万6,684口」と題した記事が掲載されていました。
本記事の内容は以下の通りです。
■ 住宅金融支援機構は4月から募集を行なっていた「マンションすまい・る債」の募集結果を発表した。
■「マンションすまい・る債」は、マンションの修繕積立金の計画的な積み立てと適切な管理をサポートすることを目的に、同機構がマンション管理組合向けに発行する債券。
■ 今回の募集口数15万口(1口50万円・総額750億円)に対し、応募口数は8万6,684口(対前年度比8.7%減)、応募組合数は1,521組合(同13.8%減)。組合平均の応募口数は57口(同3.2口増)だった。
■ 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、4~6月にかけてのマンション管理組合の総会が延期となり、応募手続きが滞ったことが減少の要因。
つまり、住宅金融支援機構が発行する「マンションすまい・る債」の今年度の募集口数(総額750億円)に対して、応募がその6割にも満たない状況(1521組合 × 57口 × 50万円/口=433億円)にとどまったため、応募したすべての組合は無抽選で「すまい・る債」を購入できたというわけです。
ちなみに、2020年度の「すまい・る債」の募集利回りは0.08%。
<本金利は10年満期まで預けた場合の年平均利率(税引後:0.0678%)
超低金利時代のもと、以前と比べて魅力的な利回りではないかもしれません。
ただ、一般的に管理組合が預けている銀行の普通預金や定期金利はどうなのでしょうか?
普通預金: 年利 0.001%
定期預金: 年利 0.002%
天文学的に低い利息のため、もはや「タンス預金」と実質変わりません。
しかも、銀行預金には「ペイオフ」(破綻した金融機関に代わって、預金保険機構が預金者に預金を一定額までは払い戻す制度)という制度があります。
預金の保護対象は、1金融機関あたり元本1千万円まで(+その利息)です。
一方、50戸程度のマンションであれば、数千万円の預金残高があるのが普通です。
上記基準額を超える部分は破綻した金融機関の財産状況に応じてしか支払われないため、組合財産を毀損するリスクがあるのです。
要するに、
1つの銀行に多額の預金を預けることは、明らかにリスクとベネフィットのバランスが悪くなっているのです。(以前はマンション保険にも積立型プランがあり、5年間預けるとそこそこの利息がついていましたが、今は掛け捨てプランしかありません。)
そのため最近では、利息は一切付きませんが、全額が保護対象になる「決済用預金」に切り替えるマンションも増えています。
それに比べて、「すまい・る債」は銀行に預けるよりは数十倍も金利が高いわけですから、これを活用しない手はありません。
「すまい・る債」は、政府保証こそ付いていませんが、法にもとづき国の認可を受けて発行しています。
また、支援機構は政府100%出資の行政法人ですから、国債を購入するのと実質変わりません。
さらに、金利だけではなく、以下のようなメリットもあります。
(1)中途換金も可能
10年間の利付債券ですが、大規模修繕工事費用に充てるなどの場合には、第1回の積立ての債券発行から1年以上経過すれば中途換金の申出ができます。
(2)債券は安全に保管
積み立てた債券が盗難・火災・紛失等の事故に遭い、財産の保全に支障を来たすことのないように、組合に代わって支援機構が無料で債券を保管します。
(3)大規模修繕工事等の融資を受ける際に金利の優遇がある
資金面で苦しい管理組合が大規模修繕工事を実施する際に、支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用する際に、その融資金利(10月現在:0.68%)について年0.2%の引き下げ優遇が受けられます。
なお、私が管理者を務める都内の投資用マンションでは、今年大規模修繕を実施した際に、支援機構の融資を受けることで資金を確保することができました。
しかも、東京都の場合、独自の助成制度(下記参照)によって支援機構のリフォームローンの融資金利(最大1%相当分まで)を対象に助成金を受けられます。
このマンションについても、先日支援機構からの融資決定を受けて都に申請したところ承認されて10年間の融資が「実質無金利」となったのです。
<参考サイト>
www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp
<参考記事>
なお、 管理会社のフロント担当者が、資金運用の見直しまで管理組合に助言してくれることは期待しない方がよいでしょう。
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