悩ましい「認知症トラブル」のリスクに管理組合はどう対応すべきか?

3月21日付のYOMIURI ONLINEで、「マンションで認知症トラブル」と題する記事が掲載されていました。

それによると、

■都内のあるマンションでは、認知症の独居老人(80代)が「オートロックの鍵が開かない」としばしば管理人を呼び出したり、ドアを叩いたり危険な行為が目立つようになった。管理会社経由で家族に状況を伝えたところ、ほどなく転居していった。

■独居老人の認知症トラブルについては、他にも共用廊下を徘徊する、汚物をため込んで漏水事故を起こす、管理費の長期滞納などのトラブルを起こす事例が増えている。

■業界団体(マンション管理業協会)は、管理会社向けにこうしたトラブルへの対策マニュアルを作成し、関係者との連携や早期発見の重要性を伝えている。

■一部の管理会社では、管理人に対して「認知症サポーター」の資格取得を奨励するなど、教育研修に取り組むところもある。

どこの管理組合でも、遅かれ早かれ、将来こうしたリスクに直面するのはほぼ確実でしょうから、その対策として少なくとも以下の2点について検討しておくことをお勧めします。

 

■ 組合役員の資格要件の見直し

一般的な管理規約では、「現に居住する組合員本人」という要件が定められており、その選任方法も事実上輪番制にもとづいているケースも多いのが実情でしょう。

こうした場合には、たとえば「組合員本人の代わりに同居する家族が役員就任することを認める」あるいはその同居要件もなくすなど、資格要件を緩めるための規約改正を検討するのも一案です。

 

■ 区分所有者名簿の定期更新

冒頭の記事でも紹介されているように、認知症の独居老人が共用施設等を傷つけたり、居住者とのトラブルを引き起こしたりした場合に、その家族や親せき等に連絡がつけられるようにしておくことが早期解決のために重要だと思われます。

そのため、管理会社とも連携して2、3年ごとに名簿の更新を行うようにするとともに、その際には緊急連絡先の記載を必須事項とするなどの留意が必要ではないかと思います。

一方、いわゆる高齢者対策として住民同士の見守り活動や、居住者の親睦を図るようなイベントの実施の企画も考えられますが、理事会役員の負担が大きいため実際にそれらを継続していくのはなかなか難しいでしょう。

あるマンションの事例では、管理組合とは別に「自治会」組織を発足させて、老人介護や認知症の予防体操などのサークル活動やイベントを展開しているところもあります。

さらに、『居住者台帳』を独自に整備し、緊急連絡先のほかに血液型やかかりつけの医者、既往症、常用薬、自力避難に関する支障の有無まで網羅しているとのことです。

こういうマンションは素晴らしいですね!

自治会活動をサポートしている方には、本当に頭が下がります。

都市部の町内会(自治会)は、昨今住民の加入率も年々低下して衰退していく傾向にあると聞きますが、住民の高齢化リスクへの対応として「共助」としての町内会の役割が再認識されていくのかもしれません。

 


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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