マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
11月22日付けのニュースサイト「フォーブス・ジャパン」に、『「積立金貧乏」のマンションが多発する理由』と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ マンションの修繕積立金とは、将来の大規模修繕に備えた原資になるが、多くのマンションで早ければ2回目、遅くとも3回目の大規模修繕となると積立金不足といった事態が生じている。
■ この時、各々が数10万円単位の一時金を足並み揃えて拠出できるケースは非常にまれ。管理組合でローンを組むか、修繕積立金をアップさせることでローン支払いをしていくケースもある。
■ 当初は毎月5000円程度だった修繕積立金が、いきなり3万円にアップするなどというのは、家計によっては受け入れられない場合があり、管理組合総会で否決されることも多い。
■ 今ある手元資金でできることだけをやるとか、何もしないといった選択をすると、建物はどんどん陳腐化し、資産価値を下げることにつながるうえ、建物の寿命も短くしかねない。
■ 多くのマンションがこうした負のスパイラルに陥る原因は、「新築販売時の修繕積立金設定」にある。
■ 新築マンション購入時には「売買価格や諸費用」のほか「住宅ローン返済額」「管理費」「修繕積立金」などが提示されるが、毎月家計から出ていくこれらの出費は少ないに越したことはない。
■ 売主系列の管理会社から見れば、管理費(≒ 管理委託費)は、毎月の売上であり利益だから、管理費は極力高めに設定しておきたい。一方、修繕積立金は、管理組合がプールする貯金であって売主には直接は関係ないから、どうしてもここを極力低額にして、マンション購入のハードルを下げて売りやすくする。
■ 国交省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表しているが、それによると、概ね平米あたり200円を目安としている。例えば70平米のマンションなら適正な毎月修繕積立金額は1万4000円。この水準の積立金を入居直後から続けていればおおむね問題ないことになる。
■しかし、ガイドラインはあくまで指針に過ぎない。現在でも積立金方式は「段階増額積立方式」または「一時金徴収方式」であり「毎月均等」としているところはほとんどない。
■ こうしたからくりに気付き、修繕積立金方式を変更するなどで、マンションの持続可能性を担保しようとする管理組合は少数派だ。
■ 修繕積立金が潤沢で今後値上げや借金をする必要がなく、物理的にも経済的にも優れているマンションと、修繕積立金が枯渇し、値上げをするか何もできずに陳腐化し、寿命も短くなるマンションが、本来同等の資産価値を持ち得るはずがないが、これらが同列に扱われているのが国内不動産市場の実態だ。
本記事でも紹介されている「分譲マンションにおける修繕積立金のワナ」については、すでに本ブログでも何回も紹介しているので、繰り返すつもりはありません。
(添付した過去の記事を参照ください)
参考に、あるマンションの事例をご紹介します。
今年で築21年目を迎える顧問先のマンションでは、長期修繕計画を5年ぶりに見直すことになりました。
現在平米あたり月額200円を徴収していますが、この金額になったのは今からまだ4年前のことです。
それ以前は半分以下の90円でした。
一方、国交省のガイドラインに基づいて試算したところ、機械式駐車場が全戸分付設されていることもあって、均等積立方式による徴収で必要な金額は340円です。どう考えても将来さらなる増額を余儀なくされるのは明らかでした。
そのリスクはなるべく抑制するために、4年前に当社がコンサル会社に起用され、管理委託費の3割削減に成功したことで、戸あたり年間約6万円に相当する剰余金が増えたのです。
さらに、その後、照明のLED化による電気料金の削減、空き駐車場の平面化工事などの手を相次いで打ったことで、さらにこの組合の財政状況は改善されました。
それでも、現状の修繕積立金(@200円)を70%値上げして、@350円にしないと将来足りなくなるというのが現実です・・。
もし築10年目以前にメスを入れていれば・・と思うと残念です。
その一方で、まったく4年前からとはいえ、何もやっていなければ、倍額の@400円にしても足りなかったはずです。
それを考えれば、戸あたりで毎月1万円強の負担増も決して楽ではありませんが、まだ許容範囲ではないかと思います。
ところで、
本記事で紹介されている「修繕資金が潤沢で物理的にも経済的にも優れたマンション」というのは世の中にどれだけあるのでしょうか?
私の見立てでは、
100棟あっても、そのうち2,3棟もあれば上出来ではないでしょうか?
中古市場では、圧倒的多数派の「積立金貧乏なマンション」で溢れかえっています。
残念ながら、
流通市場では「悪貨は良貨を駆逐する」状態がまだしばらく続くことでしょう。
<参考記事>
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