マンションの屋上防水改修工事に「25年」の長期保証が付帯する理由
2024/12/06
7月24日付の日経新聞に、「マンション第三者管理に指針 修繕などで住民負担増防ぐ」と題した記事が掲載されました。
<参考記事>
本記事の要約は以下の通りです。
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■ 管理会社が管理組合の理事会の機能を担う「第三者管理」に関し、国土交通省は指針を策定するため、同省のマンション政策に関する検討会が24日に指針を整備することを確認した。方針を明記した報告書は8月にも公表する。その後、今秋に立ち上げるワーキンググループで議論し、適用時期は今後詰める予定。
■ 理事のなり手不足で管理会社に委ねるケースが増えており、修繕工事の受発注を一手に行うことによる修繕工事費の負担増の懸念が生じている。留意点を明確にし、住民側が不利益を被らないようにする。
■ 一般的な管理組合は、組合内の理事会で審議・決定した規約や修繕計画などの議案を総会の決議を経て正式決定する。
■ 第三者管理は管理会社が理事会の役割を代行する仕組みで、住民らの業務負担は軽くなる。
■ 第三者管理はもともとリゾートや投資用で普及していたが、近年は高齢化や共働き世帯の増加などによる理事のなり手不足を背景に、一般のマンションにも導入が広がっている。
■ マンション管理業協会によると、手がける管理会社(検討中含む)は22年時点で20年から3割近く増えた。
■ ただ、管理会社による方式には懸念の声もある。相見積もりなしに自社に大規模修繕工事などを発注すれば、費用が割高になるといった住民側への弊害も出かねないからだ。
■ 国交省の2023年2〜3月の調査では、第三者管理を手がける管理会社の5割弱は大規模修繕工事を自社で受注していた。6割弱は管理者として受託契約を結んでいない例があり、責任の所在が不明確でトラブル時の責任追及が困難となる恐れも検討会で指摘された。
■ 指針には利益相反を防ぐため自社への発注の際の申告や、契約時に書面で管理者としての業務範囲を明文化することなどを盛り込むことが検討される。また、標準管理規約などに管理会社の業務を監視する「監事」の設置を盛り込むことも視野に入れる。
■ 国交省は17年に外部の専門家らによる第三者管理に関する指針を策定していたが、管理会社による形式は想定していなかった。
■ 国交省の指針は法的拘束力はなく、実際に順守するかは各社の判断となるが、公的な基準を示すことで管理組合の不利益につながる契約を防ぐ効果が期待される。逆に、指針は第三者管理の普及に追い風になりそうだ。
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そもそも区分所有法上は、マンションの管理者(理事長)は区分所有者から選出することを前提としていません。
しかしながら、国交省が管理組合向けのガイドラインとしている「標準管理規約」では、区分所有者の中から管理者(理事長)を選任することを想定し、多くのデベロッパーもこれに倣って各マンションの管理規約を作成しています。
これは、国が管理組合と管理会社の間の利益相反リスクに鑑みて、「管理組合(区分所有者)による自治主義」を基本の運営方針としたからと考えられます。
それにもかかわらず、いま「第三者管理方式」のマンションが増えている理由として、大規模・超高層マンションの供給増という事情があると思われます。
新築分譲マンション市場では、タワーマンションなど超高層マンション(20階以上)による供給戸数が、2002年以降は新規供給戸数全体の10%〜20%弱の割合を占めています。(下図参照)
その結果、マンション一棟に、数百から千単位の世帯数が入居することも珍しくなくなりました。
従来は、どれも似たような間取りと面積で、分譲価格もさほど変わらない「金太郎飴」タイプのマンションが主流でした。
そのため、住人の年代や家族構成、所得層やライフスタイルも似通っていることが普通でしたが、大規模タワーマンションでは全く異なるタイプの住人で構成されることも珍しくなくなりました。
そのため、理事会や総会で様々な決め事をしようとする場合、意見がまとまりづらく、全体的なコンセンサスを得ることが相対的に難しくなりました。
また、こうしたマンションの場合、組合役員の数も10名を超えるため、理事長はもちろん、理事会をサポートする管理会社のフロントマンには精神面も含めて非常に負荷がかかる仕事になっています。
こうした事情から、マンション管理会社は、まず大規模新築マンションを対象に第三者管理方式の導入を舵を切るようになったものと思われます。
ただ、このスキームにおける最大の課題は、区分所有者との「利益相反リスクの解消」(管理者による「お手盛り」運営の排除)であることは明らかです。
現状の理事会による運営方式でも、管理組合側の無関心や知見の不足を悪用したケースに遭遇しますが、それに拍車がかかることは想像に難くありません。
そのため、国交省が利益相反リスクの排除を念頭に置いた管理会社に対するガイドラインを示すことには賛成です。
今後の動向に要注目です。
<参考記事>
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