マンション管理組合に管理会社のリプレイスを勧めたワケ
2025/02/10
昨秋から管理コスト適正化に取り組んでいたマンションで、昨日総会が開催され、管理委託費の減額が無事承認されました。
昨日は、季節外れの降雪の中、ウィルス感染防止対策として会場の窓や扉が大きく開放された状態での開催となったため、まさに凍えそうでした・・・(寒)。
さて、こちらのマンション(築13年目)については、昨年末から2回にわたって管理会社との委託条件の交渉を行ったところ、当初の削減目標(=事前の査定額)を超える成果を挙げる見通しが立ちました。
しかし、その交渉過程で予想もしていなかった提案が管理会社からありました。
なんと、エレベーターの保守点検について現状のPOG契約からフルメンテナンス(FM)契約に切り替えることも可能だというのです。
その具体的な提案条件を図に表すと、以下のようになります。
上の表のとおり、POG契約の場合、経年劣化に伴う「部品の修理・交換」にかかる費用の負担は委託費の中に含まれていません。
一方、FM契約の場合は、「部品の修理・交換」にかかる費用も保守会社の負担となります。その分、当然ながら委託費はPOGより高く設定されます。
つまり、FM契約の場合、築30年前後で必要になる設備リニューアルまでの修繕費については、「事前積立分」として毎月の保守委託費に含んだ格好になっているわけです。
しかし、通常では既築マンションのエレベータで当初からPOG仕様で契約している場合、途中でFM契約に変更することはできません。
その理由は、保守会社の将来の修繕コストの負担リスクにあります。
独立系保守会社でも、FM仕様とPOG仕様の金額差(=修繕費の事前積立分)として毎月1万円程度(税別)は設けています。
そのため、設備リニューアルまでの30年間ではその積立て分がトータルで360万円が積み上がることになります。
もし仮に、築10年目でPOGからFM仕様に切り替えを認めると、事前積立てがその3分の2(240万円)に減ってしまいます。
それでは、今回なぜこのような提案が実現したのでしょうか?
事情を確認したところ、独立系保守会社による大手マンション管理会社への営業政策の一環として、同社受託物件に対して極めて例外的に提案したものであることがわかりました。
管理組合にとっては、メーカー系から独立系への委託先変更によってPOG契約での委託金額を大きく削減することも可能でした。(現状比46%ダウン)
一方、現状とほぼ同等のコスト負担ながら、将来の修繕費用の負担が免除されるFM契約への切り替えも選択肢として増えたわけです。
その結果、この管理組合では、今後修繕費の負担がないFM契約に仕様変更する方針を選択されました。
その背景には、修繕積立金会計の剰余金不足という事情がありました。
昨年、こちらのマンションでは初めての大規模修繕を実施したところ、外壁タイルの不具合が当初の想定をはるかに超える割合で発生していたたため、工事予算が大幅に増えたために剰余金が大きく減少してしまったのです。
今回の総会では修繕積立金の増額改定(現状比60%増)も議案に上程され、無事承認されましたが、今後の修繕費負担のリスクを抑制するためにエレベーター保守もFM仕様への変更を決断されました。
ここで、管理組合にとって現状のままPOGでコスト削減を享受するのと、FM契約に切り替えて将来の修繕支出を免れるのとどちらが得なのか、検証してみましょう。
概算では、およそ400万円と推測されます。
<年額12万円(FMとPOGの通常差額)×30年×1.1(消費税分)=396万円>
一方、このマンションにおいて竣工以来実施した修繕工事は、
合計24万円(各種バッテリーの交換)でした。
したがって、
今後リニューアルまでに必要な修繕費用は、差引き372万円・・(A)
と想定されます。
POGの委託費との差額分(年額+17.6万円)が将来の修繕に備えた積立分に該当しますが、その金額の合計は、リニューアルまでの今後17年間の総額で
329万円(税込ベース)・・(B)
<年額17.6万円(POG契約との差額)×17年×1.1(消費税分)>
今回の契約変更に伴うエレベーターの保守委託費(POG契約のまま)の減額効果で得られる剰余金の増加は、
337万円(税込ベース)・・(C)
<年額18万円(現契約との差額)×17年×1.1(消費税分)>
つまり、上記前提条件で両者を比較した場合、
・FM契約を選択した場合 :43万円の得 <(A)ー(B)>
・POG契約を選択した場合:35万円の得 <(A)ー(C)>
上記の前提条件をもとに比較すると、FM契約を選択する方が若干お得ではありますが、そんなに大きく変わらない結果となりました。
ただ、消費税の増税、あるいは大きなインフレが将来発生するリスクを考えると、事前に支出が確定しているFM契約を選択した方が無難と言えるでしょう。
いずれにしても、管理委託契約の見直しで財政状況の大きな改善が実現したことには変わりなく、事前の期待通りのベネフィットを管理組合に提供できてよかったと安堵しています。
<参考記事>
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