マンション修繕積立金の増額幅を大幅に圧縮できたワケ
2025/01/06
都内のワンルームマンション(築16年目)では、2年前に「第三者管理」に変更となり、現在マンション管理士である私が理事長を務めています。
この7月に、このマンションで1回目の大規模修繕工事が竣工したのですが、資金繰りで苦労したので、その体験談をご紹介します。
この大規模修繕工事のために3千万円の負担を強いられることになりました。
ただ、このマンションには繰越剰余金が1千万円強しかありませんでした。
また、築15年を超えると、大規模修繕以外にも、給水ポンプ、集合インターホン、消防設備、照明器具といった各種共用設備の耐用年数に到達し、そろそろ更新が必要な時期を迎えます。
それを考えると、一定の剰余金を確保しておく必要もあるため、結局大規模修繕費用全額に近い資金を外部から調達する必要があることがわかったのです。
では、どこから調達するのか?
第1候補は、住宅金融支援機構です。
支援機構には、「マンション共用部分リフォーム融資」という商品があり、
最長10年間(原則)の無担保融資が受けられます。
借入金利も現時点では、年利0.55%と、非常に低い水準です。
<なお、支援機構の発行する債券(=マンションすまい・る債)を保有している場合は、0.2%引下げの優遇が受けられます。>
ただし、融資を受けるには、以下のとおり「一定の条件」を満たす必要があります。
<主な条件>
(1)総会の決議で(a)から(f)までの全てが決議されていること。
(a) 管理組合が共用部分の工事を実施すること。
(b) 管理組合が住宅金融支援機構から借入れをすること
(c) 借入れの返済には修繕積立金を充当すること。
(d) (公財)マンション管理センターに保証委託すること。
(e) 手持金に充当するために一時金を徴収する場合は、その旨と徴収額
(f) 修繕積立金を増額する場合は、その旨と増額後の額
(2)修繕積立金の滞納割合が原則として10%以内であること。
(3)毎月の返済額が毎月徴収する修繕積立金の額の80%以内になること。
ただし、3千万円の借入金を今後10年で返済するには、元本だけで毎年3百万円ずつ返済しなくてはなりません。
しかも、上記(3)の条件を満たすには、毎年修繕積立金を4百万円程度に設定する必要があります。
そのため融資に先行して、今年の総会で修繕積立金を40%増額改定することを提案し、決議・承認を得ました。
なお、支援機構の融資については留意すべきことがあります。
それは、工事の完成を確認した後にはじめて融資が実行される!ということです。
ただ、このマンションの場合、修繕費のほぼ全額に相当する資金の融資を受ける必要があるうえ、工事竣工まで支払いを待ってくれる建設業者はいないので、このままでは修繕を実施できませんでした。
(そういう意味では「制度的な欠陥」があると思います・・)
それでは、どうすればよいか?
それは、「つなぎ融資」を利用することです!
このマンションでは、民間企業の「リコーリース」から工事着工時につなぎ融資を受けることで、なんとかこのハードルをクリアすることができました。
無担保融資で年利2.5%ですが、
融資期間を3ヶ月と仮定すれば、実質0.6%強です。
<詳細は下記ページ参照>
そして、 支援機構の融資に関連して、ぜひ知っておきたいことがあります。
それは、東京都の「 マンション改良工事助成制度」です。
(下記サイト参照)
www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp
本制度は、分譲マンションの適正な維持管理の促進を目的に、計画的に改良・修繕する管理組合に対して、支援機構と連携した助成(利子補給)を実施するものです。
助成の内容は、支援機構の金利が1%(1%未満の場合は、当該金利)低利になるよう、都が管理組合に対し利子補給するというものです。
支援機構の融資金利はすでに1%を切っているので、
この助成金を受けることで事実上「無金利」で融資を受けられることになります。
このマンションでも、先日東京都から助成金支給決定の通知が届いたので、今後10年間元本の返済だけで済むことになり、管理組合の負担を軽減することができました。
なお、この助成金は、都内にある分譲マンションだけが対象になるのでご留意ください。
<参考記事>
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