マンション一括受電業者が相次いで淘汰されている理由

 

先日の日経新聞に、関西電力が長谷工コーポレーションのマンション電力事業を買収するとの記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

この記事を要約すると・・・

■16年4月にスタートした電力小売りの全面自由化に伴って、関電は新電力各社と激しい販売競争を繰り広げている。

■収益力強化策のひとつが首都圏での需要開拓で、今回の買収をてこに首都圏の家庭向け契約10万件の目標を達成する予定。

■関電は17年10月にもオリックスから一括受電事業を175億円で取得した。同事業は住人が個々の判断で他社へ契約変更することが難しいため顧客流出リスクが低く、買収により効率よく規模を拡大できる利点がある。

■一方、既築マンションの場合は全世帯から契約の同意を得る必要があり、営業面の難しさを指摘する声もある。

 

この記事にも紹介されているように、関西電力は昨年9月、オリックス電力が行っていたマンション高圧一括受電サービス事業も譲り受け、グループ連結子会社として「Next Power」を設立しています。

 

さらに言えば、それ以前(14年10月)にもマンション一括受電サービス専業の「中央電力」とも資本業務提携しており、事業買収に非常に積極的です。

 

それにしても、なぜオリックスも長谷工も、相次いで一括受電サービスの事業を手放してしまったのでしょうか?

 

端的に言えば、電力小売りの自由化に伴って、既存の管理組合側に「一括受電サービス」を導入するメリットがほぼなくなってしまったからです。

 

この一括受電サービスとは、共用部だけでなく、専有住戸全体の電気もすべて受電サービス業者(=新電力)から購入する代わりに、電力料金削減のメリットを享受できるというものです。(下図参照)

そのためには、たとえば首都圏のマンションの場合、電気室内にある東京電力所有のキュービクル(変圧器)を撤去したうえで、新たに一括受電サービス業者が所有する設備機器に置き換える必要があります。

 

管理組合に対する訴求ポイントとしては、「管理組合は何の出費もなく、契約を切り替えるだけで共用部の電力料金が約40%下がる」という謳い文句がありました。

 

一方、受電サービス業者(=新電力)にとっても、当初設備の投資が伴うものの、高圧受電によって3割引きの価格で電力を仕入れることができるため十分差益を稼げるうえ、かつ10年以上の長期契約によって検針・請求サービス業務も含めて安定収益が得られるという魅力的なビジネスモデルでした。

 

ところが、2016年の電力の小売り自由化が大きな「逆風」となってしまいました。

 

まず、これまで地域電力会社以外に選択肢がなかったマンション居住者が、新たに業界に参入した新電力各社と自由に契約ができるようになりました。

 

一括受電を導入するにはマンション内の全居住者が現電力会社との契約を解除する手続きが必要なため、事実上「全戸同意」を取り付ける必要があり、これが導入の障害になるケースが少なくありませんでした。

 

それがこの小売り全面自由化によって、ハードルがさらに引き上げられる格好になったわけです。

 

第2に、新電力各社の提示する価格が従前より押しなべて5%程度下がったことで一括受電のメリットが価格競争力がほぼなくなってしまいました

 

一括受電サービス業者の「共用部の電力料金が4割下がる」という最大の謳い文句ですが、専有住戸当たりの経済効果に換算すると実は大したレベルではありません

 

なぜなら、マンション全体の電気料金のうち共用部分の占める割合はたった2割程度にすぎないからです。

 

つまり、専有部の電気料金が共用部のそれよりも4倍多いのです。

 

したがって、共用部の電気料金が4割下がるという経済効果を専有部住戸に置き換えると、(その4分の1に相当する)1割ダウンに過ぎないことになります。

 

つまり、一括受電サービスの「からくり」とは、

全戸同意の取り付けという高いハードルが設定されている割りに、各住民の電気料金は従前比1割程度のダウン(世帯平均:月額1,000円程度)しか享受できないという商品だったのです。

 

しかし、小売り自由化後の現在では、居住者が気ままに契約先をスイッチできるとともに、従前比で5%程度のコストダウンならすぐに実現できてしまいます

 

そうなると、「一括受電しても追加で5%しか料金が下がらないなら、電力会社の縛りがなく自由に選べる方がいい」と考える人がいても決して不思議ではありませんね。

 

昨年以来、一括受電業者が相次いでこの事業を他社に譲渡しているのは、一括受電サービスの比較優位性が大きく損なわれた今、既築マンションへの新規営業をしても獲得するのは非常に困難と認識したからでしょう。

 

ただ、せっかく規制緩和によって生まれたビジネスが、さらなる自由化の影響で既得権益の代表企業に徐々に吸収されてしまっているというのも皮肉な話であります・・・。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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