マンション管理費の長期滞納問題、知っておくべき解決方法と事前の対策
2024/07/05
築20年を超えるマンションで発生する保険事故のうち「漏水」が約7割を占めているそうです。
ただ、一口に「漏水」と言っても、その原因や被害が生じた場所や状況はさまざまです。
漏水事故を含むリスクに備えて、マンション管理組合では、共用部を対象とする損害保険に加入しています。
その補償内容は、火災、破裂・爆発などの事故、自然災害(落雷、風災、雹(ひょう)災、雪災)、物体の飛来・落下などによる「突発的な損害」など多岐にわたります。
さらに、主要な「補償特約」として、
(1)施設賠償責任補償特約 共用部分が原因で他人の身体や財産を毀損(きそん)した場合の補償
(2)個人賠償責任補償特約 専有住戸に起因する事故で他人の身体や財産に損害を与えた場合の補償
の2つも付帯しているのが一般的です。
さらに、オプションとして「地震保険」を付けることも可能で、これらを総称して「マンション総合保険」と呼んでいます。
今回は実際に起きやすい漏水事故の事例をもとに、保険の適用ができるのか、どこまで補償されるのかについてご紹介しましょう。
漏水事故の場合、事故の発生段階ではその原因や浸水した箇所がよく分からないことが多いのが実際です。
その場合、まずは「水濡れ原因調査」を行う必要があります。
この調査に要する費用はマンション保険の補償の特約に含まれているのが一般的で、実費相当は補償されるのでぜひ覚えておいてください。
(ただし、「年間100万円以内」など金額の制限があるのが一般的です。)
本ケースの場合、共用部ではなく、専有住戸間のトラブルのため、加害者・被害者の当事者間で解決すべき問題とも言え、管理組合が関与する問題ではなさそうだと思われがちです。
ただ、このようなケースでは、上でご紹介した「個人賠償責任補償特約」を利用できます。
下階の被害者から賠償請求された場合、上階の加害者が管理組合(理事長)に事故の報告をして保険適用を申請すれば保険金が支払われます。
そのため、加害者が個人的に賠償責任保険に加入していなくとも、被害者は管理組合の保険で救済されることになります。
なお、この場合、加害者が区分所有者ではなく、区分所有者の「家族」あるいは「賃借人」であっても保険金は支払われます。
この特約は「専有住戸の使用等に起因する事故」が成立要件となっており、「加害者が誰か」までは問われないからです。
漏水の原因が、共用設備の老朽化が原因と判明した場合には、上でご紹介した「施設賠償責任補償特約」の適用を受け、当該住戸の修繕費用については補償の対象となります。
ただし、共用設備自体の修繕費については補償の対象になりません。
漏水原因が設備の老朽化であって、自然災害や突発的な事故による破損等ではないからです。
漏水事故について覚えておいてほしい注意点が1つあります。
それは、風雨、雪、雹(ひょう)などの吹き込みや漏入による損害は、保険会社の「免責事項」に含まれているため、補償の対象外になるということです。
例えば、屋上防水シートの劣化が進んだ結果、最上階の部屋で雨漏りが発生したとしても補償はされません。
これに類する事例として、顧問先のマンションで実際にあった事故をご紹介しましょう。
このマンションでは、昨年の台風の際にエレベーターが緊急停止しました。
原因は、強い風雨によってエレベーター設備内の部品が被水したためであることがわかりました。
保守会社が緊急対応し、設備内の水を拭き取ったところ、エレベーターは無事復旧しました。
しかしながら、被水した部品は不具合が再発するリスクがあるとの理由で、その後管理会社から部品の交換工事の見積書が提示されました。
このマンションのエレベーターは「フルメンテナンス」の保守契約のため、経年劣化に伴う設備の修繕や部品の交換は保守点検費に含まれており、管理組合が修繕費を負担する必要はありません。
しかし、本ケースの場合には「天災等による損害」に該当するため、管理会社の免責事項に該当する、ということでした。
そこで、天災が原因ならということで、マンション保険の適用を申請したところ、それも「却下」されてしまいました。
本ケースの場合、風災によって建物や設備が破損したわけではないので、単なる「雨水の侵入」が原因と判断されたからです。
建物や設備の老朽化だけでなく、「雨漏り」による損害も保険では原則(※)補償されないことは覚えておきましょう。
(※ 損保会社の一部については、共用部の老朽化による雨漏りの場合も「施設賠償責任特約」の適用で被害住戸の修繕費を補償するプランを用意しています。ただし、保険料はかなり高くなります。)
<参考記事>
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