当社の顧問先マンション(築15年目)では、来年初めに大規模修繕工事の実施を想定し、施工業者5社から相見積もりを先日取得しました。
その結果は、以下の通りです。
各社の見積条件を見ると、
総額は税別4千万円強のところ最大170万円の僅差に収まりました。
工事総額に対する比率は、たったの2%に過ぎません。
各社が犇めき合った接戦であったことが伺えます。
管理組合側で事前に想定していた予算額(税別4,500万円)と比べると、1割強下回ることができたことになるので、うまく「競争原理の導入による経済効果」が得られたと言えるでしょう。
さて、マンションの大規模修繕工事において、多くの管理組合にとって悩ましい問題とは何でしょうか?
大きく課題は3つあると思います。
1)適切な実施時期
2)工事予算の立て方
3)施工業者の候補選定
今回は、上記3つの課題について、どう進めるべきかをご案内しましょう。
1)適切な実施時期
大規模修繕工事の実施周期は概ね12年~15年と想定されています。
つまり、30年間の長期修繕計画においては、2回実施することを見込むのが一般的です。
ただ、マンションが立地している環境、紫外線や風雨による影響の大きさ、当初の施工の巧拙、シーリング等の使用部材の良し悪しなどによって、実際の経年劣化の進行具合は大きく異なってきます。
したがって、いつ実施すべきかを判断するには、事前に「建物劣化診断」を受けるべきです。これは概ね10年前後の周期で実施するとよいでしょう。
その結果によって、概ね標準的な劣化が進行しているのか、それとも標準より早く劣化が進行しているのかを把握できるので、適切な実施時期もおのずとわかるはずです。
2)工事予算の立て方
この建物劣化診断を実施する際にお勧めしたいのが、その診断結果にもとづいて修繕対象箇所の数量積算も併せて行う、ということです。
何故かと言えば、
それによって概算の修繕工事費も算出することが可能だからです。
本記事の冒頭で紹介した、顧問先マンションの相見積もり取得結果の表の一番左側にある「建物劣化診断にもとづく概算予算額」が、まさにそれです。
それに加えてさらに副次的な効用もあります。
修繕対象箇所の数量について積算済みのため、その後複数の施工業者から各社同一の前提条件のもとで相見積もりを取得し、比較検証ができるからです。
3)施工業者の候補選定
本記事で紹介した顧問先マンションでは、施工業者のリストアップの際に、当社、役員、管理会社からそれぞれ候補先を挙げました。
業界の関係者であれば、他のマンションでの発注実績のある先の名前が挙がるでしょうし、近傍の物件で受注した事例がある施工業者から選択してもよいでしょう。
それが難しいなら、ネットで検索して対象マンションのエリアに営業拠点があり、かつそれなりの実績のありそうな会社をチョイスします。
その際、会社のプロフィールの分かる資料(売上規模、建設業の免許番号、社員数、過去数年の受注実績など)は少なくとも収集しておきましょう。
施工業者のクレジット(信用度)に不安がある場合には、候補先に対して「大規模工事瑕疵保険」に加入することを発注の条件に加えましょう。
住宅瑕疵担保履行法をはじめとした消費者保護政策の一環として、2010年からマンションの大規模修繕工事に関する瑕疵担保責任保険の制度が開始しました。
<参考>
この保険の最大のメリットは、
・施工業者が瑕疵担保期間中に倒産した場合
・工事後に瑕疵が見つかった場合に相当の期間を経過してもその責任を履行しない場合などに、発注者である管理組合に対して直接修繕費用に相当する保険金が支払われる
ということです。
言い換えれば、瑕疵担保期間中に施工した業者の倒産や清算などによって瑕疵担保責任が消滅しても、国が認定した上記保険に加入していれば、一定の保証は有効なまま維持できるというわけです。
<参考記事>
村上 智史
最新記事 by 村上 智史 (全て見る)
- 管理委託費が大幅増額になると思いきや、逆にコスト削減できたマンション - 2024-09-11
- 今年10月以降の大幅改定に備えてマンション保険の中途更改を検討しよう! - 2024-09-11
- 修繕積立金の不足に悩むマンションは、まず管理コストを見直そう! - 2024-08-14