福岡の「欠陥マンション」トラブルで考える、マンション管理組合の「教訓」とは?

2月4日付けの福岡県民新聞に、「JRブランドのマンションでトラブル」という記事が掲載されていました。

 

さらに、ネットで検索してみると、「福岡市東区の分譲マンションが傾斜 販売業者の対応に憤る住人」と題した、より詳細な記事が見つかりました。

 

www.data-max.co.jp

これら2つの記事を合わせて要約すると以下の通りとなります。

■ 昨年12月、テレビのワイドショーで取り上げられた欠陥マンション疑惑。床に置かれたビー玉が勢いよく転がったり、玄関ドアが開かなくなったり、というショッキングな映像とともに、憤るマンション居住者の落胆する姿が映し出されていた。
■同マンションは、JR九州が平成6年の新駅開業に合わせて販売したもので当時の販売価格は3000万円前後。JRブランドで人気が集まり、倍率30倍の部屋もあったという。
■ところが、入居後2年目にして建物のひび割れが見つかったほかに、玄関ドアが開かない部屋が複数あることがわかり、5戸については玄関ドアの取り替えで対応することとなった。
■その際、造上の欠陥が疑う声もあったが、売主側から「主要構造部分への影響がない」との確約書が管理組合に提出され、一旦は落ち着いていた。
■その後約20年が過ぎ、玄関ドアを交換した5戸のうち2戸のドアが再び開閉困難となった。
■ その後に建物が傾斜していることが発覚し、管理組合が調査した結果建物の傾斜は最大で98mmもあった。これに起因して「玄関ドアの枠が変形し、開閉しづらく交換した部屋もある」「天井と壁の境目に隙間ができて、隣の部屋からの光が漏れている」などの“症状”が表れている。

■ 管理組合とゼネコンを含む販売業者側との協議が続いた。 販売業者は「不具合は主要構造部分に起因するものではない」「不具合が主要構造部分に影響を与えることはない」などと回答している。建物の傾斜についても、「建物の傾斜の原因は特定できない」「今後 原因追究は行わない」と区分所有者を突き放す回答をしている。両者の協議は決裂し、2019年5月、調停は不成立となった。

 

■ マンションの傾斜問題で焦点になるのは、杭の支持層への到達である。建築の専門家のコメントを紹介すると、

・傾斜地の支持地盤は敷地の表面の傾斜を見て判断するものではなく、適切な地盤調査に基づいて、敷地内で一定ではない支持地盤の深さを推定し杭の長さを決定する。

・設計の時点では、杭ごとの支持地盤の深さは推定であるので、施工時に支持地盤の深さを確認し、杭が支持地盤に到達するように施工をする。

・そのため、このマンションの杭は工場で製作する既製杭ではなく、現場を掘削し支持地盤を確認して施工をする「場所打ち杭」が採用されているのではないか

・このマンションが傾斜した原因は施工時の手抜きにより、杭が支持地盤に到達していないことによるものとみて良いだろう

 

■ 同マンションは、時期をずらして複数棟が建設されているが、施工上の不具合が生じているのは、問題の棟だけ。今年1月から詳細な調査が実施され、マンションの傾斜などの不具合の原因が明らかになる予定だ。

 

このマンションが最大10センチ近くも傾斜した原因と推測される「杭の支持層への到達」の有無についてはさらに詳細な調査が今後実施されるため、その結果を見ないことには何とも言えません。

 

ただ、これまでの経過を見て惜しまれるのは、築2年目で生じた各所の不具合(建物のクラック、玄関扉の開閉ができない)に対する原因追及の方法です。

 

その際には、「主要構造部には影響がない旨の確約書」を売主と取り交わし、修繕工事は売主負担で実施することで一旦落着したとのことです。

 

しかし、この時点で真の原因を特定するために、売主との利害関係のない第三者の専門家による精密調査が行われていれば、もっと違う展開になったように思うのです。

 

顧問先のマンションでも、本記事ほど深刻な事案ではないものの、新築工事の際の瑕疵に起因する不具合のケースに遭遇したことがあります。

 

その一例をご紹介しましょう。

■ 東日本大震災の際に外壁タイルが大量に落下したことから、不審に思った管理組合が施工方法に問題がなかったか管理会社(売主の系列会社)に確認させたが、「特に大きな問題はない」との報告を受けた。

■ その2年後に大規模修繕を実施したところ、外壁タイルに異常な割合で浮きなどの不具合が見つかったため、当初予算の5割増しの負担強いられることになった。

■ 新築時の工事に手抜きがあったのではないかとの疑念が生じたものの、すでに築10年をゆうに超えていたため、瑕疵補修の請求は諦めざるを得なかった。

 

このマンションでも、最初の大量のタイル落下事故が発生した時点で第三者による詳細な検査を受けていれば、売主に瑕疵補修請求ができていた可能性があったと思います。

 

しかしながら、調査の依頼先に「売主の子会社」である管理会社を選んでしまったため、真の原因が究明されずに終わってしまったように推測されます。

 

本記事を含め、この種のトラブル事例から得られる管理組合にとっての教訓は、以下の通りです。

・現時点で建物に不具合等が生じていなくても、建物の瑕疵(施工不良、手抜き)の調査は、アフターサービス期間(主要構造部の瑕疵は、築10年まで保証するのが一般的)が終了するまでに実施しておく。

 

・その調査の依頼先は、売主と利害関係を持たない「第三者の専門家」を選定する。

 

なお、建物の基本的な安全性を損なう欠陥が見つかった場合には、その危険度の如何を問わず、「不法行為責任」が成立します。(下記の記事参照)

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

その際には、被害者(管理組合や区分所有者)との契約関係の有無を問わず、注意義務を怠った設計者、監理者、施工業者にも損害賠償責任を問うことができます

なお、不法行為責任の消滅時効は、行為の時から20年です。

(損害を知った時からは3年)

分譲マンションの場合、「アフターサービスは最大10年間」が一般的ですが、この不法行為責任についても、覚えておくとよいでしょう。

 

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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