国交省の「マンションの管理状況の認定制度」に期待すること

2月8日付けの日経新聞に、「マンション認定制度を創設 国交省、優遇措置も検討」と題した記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

本記事の要約は以下の通りです。

 

■ 国土交通省は修繕費用の積み立てや管理組合の活動を計画通り実施する物件の認定制度を2022年までに創設する。認定物件には税制上の優遇措置などを検討する。

 

■ 適切に管理している物件を認定する「管理計画認定制度」を今の通常国会に提出予定のマンション管理適正化法の改正案に盛り込む。

 

■老朽化したマンションをそのまま放置しないようにする狙いがある。20年後には築40年を超えるマンションが現在の4.5倍の約370万戸に膨らむ見通しだ。

 

■ 国の調査では管理組合の3割超で修繕積立金が不足している。 具体的には地方自治体が修繕のための資金計画や実際の積み立て状況のほか、総会の定期的な開催や議事録の保管といった管理組合の運営状況などを評価する。自治体は改善の必要がある管理組合に対して助言や指導をするほか、必要に応じて専門家も派遣する。

 

■ 改正法案は22年までに完全施行するまでに優遇策の具体的な内容を詰める。業界団体からは修繕積立金や管理費の負担を軽減するための税優遇や、共用部分のリフォームに使う融資の金利優遇などを求める声がある。

 

■ 現状は部屋を購入する際に修繕積立金の不足や管理組合の活動状況まで説明されないことが少なくない。本認定制度の創設はマンションの管理状況も含めた物件選びに影響してくる。優遇措置などで優良物件が選ばれる流れが強まれば、不動産会社や管理会社の対応を促すことになる。

 

分譲マンションの管理状況を公的に調査のうえ、評価・認定する仕組みを構築しようということのようです。

 

わが国の高齢化・人口減少傾向が急速に進行する中、今後新築マンションの供給が減少し、既存マンションの老朽化物件の割合が上昇していくのは確実です。

 

老朽化が進行するにつれ、修繕積立金の不足、役員のなり手不足が深刻化し、適切な修繕がなされないことに伴って資産価値が低下するだけでなく、酷い場合には管理不全状況に直面するマンションも今後増えていくだろうと予測されます。

 

総論としてはこの構想に反対する理由はありません。

ぜひ進めてもらいたいと思います。

 

マンション管理組合が抱える最大のリスクは、おカネの問題です。

具体的には、修繕積立金の「簿外債務」問題です。

 

本記事では、「管理組合の3割が修繕積立金が足らない」とされていますが、かなり過小に見込まれていると思います。実態はそんなレベルでは済まないはずです。

 

なぜなら、新築マンションのほとんどは、

修繕積立金が国のガイドラインの半分以下の水準で設定されているからです。

 

マンションの長期修繕計画には将来の修繕見込額を賄うための資金収支表も備えていますが、当初の修繕積立金では到底足らなくなるので、5年ごとに「倍々ゲーム」で増額改定するか、いよいよ足らなくなった場合には戸あたり数十万円単位で一時金を徴収するという計画が組み込まれているのが実情です。

 

しかし、その資金計画には何ら「担保」がありません。

将来の区分所有者が新築当初に比べて3〜4倍の経済的負担になることを事前に了承しているわけではないからです。

 

ましてや高経年マンションの場合、住人も高齢者が多数を占めているのが普通です。

 

マンションの購入時に比べて所得が減少したり、年金生活に入ることで可処分所得が下がる中、毎月の維持費が上昇することをすんなり受け入れられるとは思えません。

 

もし本記事の認定制度がスタートした場合、このような修繕積立金の実態をふまえてどのように評価するのでしょう?

 

段階的増額プランではなく、均等積立方式で運営するよう管理組合に促すことが理想的ですが、その場合はほとんどのマンションが「落第」してしまうので、きっとそこまで厳しい評価はできないでしょう。

 

段階的増額プランでも一時金徴収方式でも、「資金を賄える形式」さえ整っていればOKにするのではないかと予想します。

 

したがって、財政状況を含めて優れたマンションを積極的に評価するという制度を期待するのは難しいと思うのです。

 

むしろ、本制度には「問題児のマンションを見つけて矯正する」という役割を期待したいです。

 

具体的には、通常総会すら適法に開催されず、決算書の所在も不明な管理不全状態のマンションをあぶり出し、これらに改善を促し、公的な支援を含めて正常化させる仕組みができれば「御の字」ではないかと思います。

 

ただ、こうした正常化を促す過程で障害になるのが、

管理規約の制約に絡む「トートロジー」です。

 

管理不全に陥ったマンションを救済するための施策を実行したくても、管理規約にもとづいて総会決議がなされないと何もできないというのが実情です。

 

たとえば、たとえ法的には可能な外部の管理者の導入をしたくても、現行規約の改正が必要になれば区分所有者の4分の3以上の賛成を集めなくてはなりません。

 

そもそも規約の改正が実現できるくらい民度の高い管理組合なら、管理不全には陥ることはないわけで、全く矛盾しています。

 

つまり、現行法の枠組みでは組合の内部機関が正常に機能していないマンションを外部の力だけで立て直すことが現行法では不可能なのです

 

建て替えにしろ、建物解体後の敷地売却にしろ、現行法の枠組みでは、区分所有者のほとんどが関与しない限り老朽化マンションは「出口」が見つけられず立ち往生に陥ってしまいます。

 

私権の制限を含めて政策的に何らかのメスを入れない限り、根本的な問題解決にはならないでしょう。

 

 

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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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