管理組合は「民泊」と「脱法ハウス」問題にどう対処すればよいか?

マンションに住む人であれば誰もが安心・安全で快適な生活を維持したいと考えている…。それ自体にたぶん異論はないでしょう。

しかし、それを脅かす新たなリスクが顕在化しつつあります。

それが「民泊」と「脱法ハウス」の問題です。

民泊とは、Airbnbのようなインターネット上の仲介サイトを通じて、個人住宅や賃貸住宅を宿泊施設として他人に貸し出すこと。

脱法ハウスとは、いわゆるシェアハウスの一種で、マンションの一室を2〜3畳に仕切られた極狭の居室として若者や単身者に貸し出しているものの、居室に窓や避難経路、消火器具などを確保していないために法令違反の疑いが高い施設です。

シェアハウスを定義・規定する法令がなかったために、合法・違法の線引きをするのが難しく、行政や業界団体の指導も後手に回っているのが実情です。

民泊もシェアハウスも、ユーザー側の視点で見れば、一人あたりの宿泊代や家賃の節約につながるという意味で経済的なメリットがあります。

一方、部屋を貸し出す主体であるオーナーにとっても、立地条件に見合ったマーケティングを通じて安定した賃貸収益が得られるという利点があるでしょう。

こうした新しい業態は地域や経済の活性化に資するという側面もありますが、既成の法規制からみればグレーだったり脱法行為につながるという「負の側面」もあります。

たとえば民泊については、継続的に営業するなら「旅館業法」に抵触する可能性が高いので、そもそも旅館業としての登録が必要なだけでなく、消防法上の必要な設備の設置が求められたりします。

シェアハウスについても、建築基準法上の「寄宿舎」として取り扱われることになった結果、間仕切り壁を準耐火構造にすることなどが義務付けられるようになりました。

こうした法令を遵守することは当然なのですが、各区分所有者が必ずそれを守ってくれる保障はありません。

そもそもマンションの管理組合は「共用部分の維持管理」が主たる業務で、区分所有者固有の財産である「専有部分の用途や使用」に関しては管理規約で「最低限の制約」を設けるくらいしかできていないからです

<標準管理規約(要約)>

◆第12条◆

区分所有者はその専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

◆第17条◆

区分所有者は、その専有部分について修繕等を行おうとするときは、あらかじめ理事長にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。

◆第19条(第1項)◆

区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、管理規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させなければならない。

この3つの条項だけでは、民泊と脱法ハウスを水際で防ぐのは正直厳しいと言わざるを得ません。

したがって、予防措置としては、やはり管理規約の改正を検討する必要があります。

その際、単に「民泊やシェアハウスを禁止する」という条項を増やすだけでなく、一定の条件に該当する場合には「理事長への届け出義務」を設け、理事会で審議した上で承認することを明文化する方がより有効ではないかと考えます。

また、その手続きを怠ったり、あるいはその可能性がある場合には、理事長等が当該区分所有者や居住者に照会したり、合理的な理由があれば専有部への立ち入りを要求できる旨も条文として加えておきます。

安心・安全で快適な生活を維持するには、「区分所有者性悪説」に立った管理規約の改正を検討せざるをえない時代が来た、ということかもしれません。


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村上 智史

村上 智史

株式会社マンション管理見直し本舗代表取締役・All About マンション管理士ガイド。早稲田大学卒業後、三井不動産に入社。土地オーナーとの共同事業、ビル賃貸事業、Jリート(不動産投資信託)の立ち上げに従事した後2013年3月退職。2013年5月 『あなたの資産を守る!マンション管理見直しの極意』(自由国民社刊)を上梓。無関心な住人の多いマンション管理組合が潜在的に抱えるリスクを解消し、長期にわたって資産価値を維持できるソリューションを提供することで、「豊かなマンションライフ」の実現を目指しています。

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